【勝田班月報・7203】
《勝田報告》
JTC-15株細胞(ラッテ腹水肝癌AH-66)の復元試験成績のまとめ:
この株は1963-5-22に培養に移されて、latent
periodもなくそのまま株化した細胞である。面白いのは現在までの経過中に可移植性を失った時期のあったことである。
1967-5-21、1968-11-26、1968-12-21の移植では100万個以上の接種でも腫瘍死は0であった。1969-5-5に軟寒天法で拾ったクローンは10,000コ接種まで腫瘍死した。 1971-12、軟寒天と液体と両培地にまき、前者からは6コのクローンを得たが、その内の一つが腫瘍性が低いらしく、復元接種動物がまだ死なないでいる。液体培地の方からはクローン4が得られ、目下検討中である。後者は可移植性のないクローンを取りたいという目的で試みている仕事である。軟寒天で得たクローンで動物を腫瘍死させなかった典型は、“なぎさ"変異株の細胞である(表を呈示)。
《黒木報告》
1.Cyclic AMP受容蛋白について(2)
目下DEAE cellulose chromato.を検討しています。
0.05−0.5M KClのlinear gradientのときはPKとCRPがよく分れず、またCRPもshoulderをもつため、0.1、0.2Mのtwo
step elutionを試みた(図を呈示)。図のように0.1MでeluteされるFrIにはCRPとPKが、0.2MのFr にはCRPが大部分にPKが少し含まれていることが分った。
このそれぞれをさらにDEsephadexで分け、その上Sephadex
G-100にもっていくことを考えています。
2.3T3 transformation:
まだtransformationに成功していないので、目下cloningによるcloneをひろってみることを試みています。Prostateのときも、cloningによりhydrocarbon
carcino-にsensitiveのcloneをひろい出した経験があります。この他、inbredのhamsterから、ふたたび、3H3を分離せんとしてます。問題は培養1ケ月以後のgrowthのcrisisをどのようにしてのりきれるかというところにあります。
《山田報告》
CQ68(RLC-10(2)4NQO処理後の変化);
引続いて2回、日を追って細胞電気泳動的変化を検索すると共に、これまでの成績をまとめてみました。この株は前報に班長が報告されたごとく、4NQO処理後36日目及び143日目に復元移植されて、腫瘍化が証明された(宿主はまだ腫瘍死していない)細胞株です。
前回に引続いて4NQO処理後230日目の泳動度分布、及びノイラミニダーゼ処理後のそれです。依然としてこの株は腹水肝癌を培養した株(例えばJTC-16)のごとく、典型的な悪性型の泳動パターンを示しませんが、比較的少数細胞が悪性化したと思われる泳動パターンです。この株の抗原性が宿主JAR-2とは、当初から多少異り、その免疫学的反応についても、しらべていますが次回報告します。このCQ68の細胞について4NQO処理の当初からの実験成績をまとめてみました(図表を呈示)。
14日目に既にかなりノイラミニダーゼに対する感受性が出現し、36日目に一応“take"されています。その後若干細胞構成に変化が生じ、ノイラミニダーゼ感受性が減少し、122日目に再び増加しています。細胞の構成純度も多少バラツキが出ていますが、日を追ってその程度が増加して来ているとは思えません。比較的少数細胞が変異悪性化し、変異しない細胞と培養条件で競合して増えていると云う印象です。
なほHI-1(なぎさ株)の電気泳動的性格も検索しましたが、前回と略々同様な成績を得、特別にこの細胞株の細胞膜は薄弱で、ノイラミニダーゼ処理により、著しくこわれてしまいました。その成績も次回書きます。
《安藤報告》
L・P3細胞DNA及び連結蛋白質のBleomysin(BLM)による切断と再結合について:
4NQO及びその誘導体の発癌活性と、細胞DNA及び連結蛋白質の切断能の間には強い相関性がある事を報告してきた。一方4NQOの関連化合物は強い制癌性をも持っている。そこで、DNAの切断、連結蛋白の切断がこの物質の制癌性の示す反応であるかもしれない。そこで著しい制癌剤であるBLMが細胞に対しこのような活性を示す(切断活性)か否かを検討した。
L・P3に25〜750μg/mlのBLMを添加し、3日間培養しcell
countをする(図を呈示)。濃度依存的に増殖阻害を受ける。これ等の濃度で処理を受けた場合、細胞内DNA、連結蛋白がどうなっているかを調べた。(図を呈示)図に見られるようにBLM
25、50、750μg/ml、30分処理を受けた直後においては、DNA一重鎖は種々の大きさに切断されていた。特に興味深い点は、25μg/mlにおいてはS値は小さくなるがpeakはsharpでありnon-randomな切断のように思われる。これは恐らく連結蛋白(Lett等の云うアルカリ性に不安定な結合)のみの切断に原因すると思われる。
50μg/ml以上の場合にはpeakはrandom patternを示し、nucleotide
bondの切断を意味しているゆに思われる。これ等の処理細胞を薬剤除去後、3時間回復培養をする。その後分析したのが図のパターンである。25μg/mlでは完全な修復が、50μg/ml以上では不完全な修復であった。
(図を呈示)図においては二重鎖切断とその回復を調べた。この場合にも濃度依存的な切断であり、特に注目すべき点は50μg/mlと750とあまり変りない事である。これ等の細胞を24時間の回復培養を行った後に分析した所、25、50では完全な修復、750では部分的修復であった。
次にこの二重鎖切断と見える障害が連結蛋白に対するものであるか否かをきめるために4NQOにいて行ったと同じ方法でBLMとPronaseとの組合せ実験を行った。図では各種濃度のBLM処理、それぞれの濃度のBLMとPronaseの組合せの結果を示す。25μg/mlの時はBLMのみでは不完全な連結蛋白切断、50、750の場合には、ほぼBLMのみにより完全に連結蛋白は切断されている。
以上の実験結果は4NQOの場合と非常によく似ている。但しBLM
50μg/ml以上では濃度依存性が少くなる点は異る。これ等の事実はBLMの制癌性を説明すると同時に、もしかして発癌性もあるのではないかという疑問をいだかせるに充分である。今后の検討が必要であると思う。
《佐藤報告》
(図を呈示)図は、543日でsingle cell cloneをつくり、以后コントロールとDAB
5μg/ml、20μg/mlで継続培養内添加をおこなった実験系図である。此の実験系のコントロールは、図の如く800日を経過しても腫瘍をつくらなかった。処理群は700日以降腫瘍をつくっている。組織像等については次回に報告の予定。
《藤井報告》
担癌ラット・血清及び腹水のリンパ球−腫瘍細胞混合培養反応(MLTR)に対する抑制作用
第30回癌学会総会の発表および本月報No.7201において、Culb-TC細胞の方が、Culb-TCをふたたびJAR-1ラットの腹腔内に接種して増殖した細胞よりも、MLTRにおけるリンパ球刺激能の高いことを報告した。この現象は、C57BLマウスのフレンドウィルス誘発癌においても同様に見られたが、in
vivoにおいて、癌細胞膜が何らかの液性成分の処理をうけ、その抗原刺激性が低下するものと考えられた。
今回の実験では、培養細胞を、担癌ラット血清および腹水をMLTR反応液に加え、その影響をしらべた。血清および腹水は、JAR-1ラットにCulb-TCを接種し、25日目のものである。刺激細胞:Culb-TC、5万個、4,000R照射、反応細胞:JAR-1ラット末梢リンパ球、50万個。反応液に0.1mlの血清(担癌)、1/1、1/3、1/9稀釋と、正常ラット血清0.1mlを、それぞれに加える。担癌腹水も同様におく。対照には正常血清各稀釋
0.1mlと1/1 0.1mlを加えた。培養6日目のMLTRの成績を対照に対する抑制率を表にした(表を呈示)。担癌血清は、リンパ球に対する反応もなく、用いた濃度で、何れも抑制的に作用した。担癌腹水は高濃度において、その抑制が反って低くなっているが、一方リンパ球に対する刺激が1/1、1/3稀釋で見られており腹水処理Culb-TCと、腹水のみのリンパ球刺激作用を分離して観察する必要が出てきた。
担癌血清のMLTR抑制から、担癌血清中の何らかの因子が、Culb-TC細胞表面の刺激基に附着して、刺激能を遮断しているものと考えられるが、それが抗体であるのか、他の血清成分であるかは、なおつづけて観察する予定である。現在X線照射Culb-TC、フレンドウィルス感染Culb-TCなどでJAR-1ラットを免疫中であり、抗血清ができ次第、MLTRにおける免疫学的特異性の問題について実験を組む予定でいます。
皮膚移植によるJAR-2ラットの純度検定:
勝田先生のところのJAR-2ラットのうち、F-20、46-7-21生の分は、同腹8匹あり、同性間皮膚移植をおこなったが、47-2-28日現在、>155日生着が6匹、>145日が1匹(死亡、死亡時グラフトは完全)、>95日が1匹(他の実験に用いられた。観察期間中グラフトは完全)で、minor
histocompatibility angigensもまず無いと云えます。
F-21、46-10-24生、は♂7匹、♀3匹で、♂→♀と♀→♂の組合せで皮膚移植をおこないましたが、♀→♂は47-2-28日(>76日)現在、7匹全く完全な状態でグラフトは生着しています。反対に♂→♀は3匹にうえた7つのグラフトは程度の差はあれ、いづれもchronic
rejectionを示し、グラフトの縮小、脱毛がおこってきておりY-染色体に関係するhistocompatibilityantigenによるrejectionと云えます。
《高木報告》
RRLC-11細胞の放出する毒性物質について:
先の班会議で報告したように、RRLC-11細胞の培養液を、限外濾過した外液について、sephadex-G25で分劃し、試験管に10mlずつ分注すると、NaClは39〜51本に証明された。そこで39本目までを5つの分劃とし( 〜 分劃)、各々を凍結乾燥後5mlの蒸留水にとかしてRFLC-5細胞に対する毒性を調べたところ、第 の分劃において最も強い毒性がみられた。しかし、細胞数でみればinoculum
size 45,000に対して4日後に65,000とわずかながら増殖がみられた。この際大体同一の条件で保存した外液では増殖の抑制は全くみられなかったので、この分劃に可成りの活性が集中していることが考えられる。ついで、RRLC-11細胞の培養液そのものについて、限外濾過を行なわず、Sphadex
G25により分劃したが、NaClを38〜51本の試験管に証明した。またOD280mμで吸収度を調べたところ19〜25本の間に強い吸収を認めたのでこれを1つの分劃とし、その前後を各々2つずつに分けて5つの分劃とした。凍結乾燥後5mlの蒸留水に溶かしてRFLC-5細胞に対する毒性をみた。この場合、えた溶液は透明でなくやや乳濁した感があったが、2回行った実験はいずれも同じ傾向でI分劃がもっとも毒性強く、ついで 、 、 および 分劃の順であった。この毒性をみる際の培養はどの分劃を加えたものも多少ともcell
sheetに上に沈殿物を生じており、また光顕的に細胞変性のおこり方が毒性物質によるものとやや異るようで、非特異的な毒作用の感がつよい。今後の実験は毒性の強い培養液の限外濾過外液について行い、sephadex
G25で再現性を確かめた後、毒性物質のえられた分劃についてさらに分析を進めて行きたいと考えている。またこの細胞の放出する毒性物質は培養により可成り変動がみられることを報告したが、安定性などの基礎的問題についても検討しつつある。まず−20℃における凍結保存について、現在、凍結14日目を検討中であるが、7日目では毒性に変りは全くみられなかった。その外、外液の凍結乾燥による影響、高い温度による影響、等についても調べる予定である。
培養内細胞悪性化の示標について:
培養内で細胞が悪性化した際のin vitroの示標を探すため、再度soft
agarを検討してみることにした。その培地の組成について、特にTodaroらの云うserum
factor free血清について予備的に実験を行った。20℃下に仔牛血清120mlを用い、硫安1/3飽和でγglobulinをおとし、この血清を濾紙で濾してγglobulinを除いた血清をとった。Serum
factorは硫安33〜50%飽和でおちることになっているので、この操作で部分的に除かれたものと考える。これを3日間氷室で蒸溜水、PBSで透析し、NH4+のなくなったことを確かめて濾過滅菌し、MEMに5%の割に加えて腫瘍細胞RRLC-11および正常細胞RFLC-5の増殖に対する効果をみた。これら細胞は、はじめの2日間MEM+5%CS培地で培養し、2日目に上記血清を加えた培地で交換して4日間培養を続けた訳である。結果は(図を呈示)、RRLC-11細胞では対照が2日目の14.4万個から6日目に120万個と増殖したのに対し、実験群では6日目に86万個でわずかな抑制がみられた。一方RFLC-5細胞では対照が2日目の14.7万個から6日目に107万個であるのに、実験群では6日目に20.5万個と抑制がみられた。Serum
factor free血清をうる技術的問題など残されているが、一応soft
agarに用いてみたい。
《佐藤茂秋報告》
1)マウス脳腫瘍(Glioblastoma)の培養細胞は現在培養日数260日となっている。240日目のアルドラーゼの解析でもC型アルドラーゼが検出され、その分子種のパターンもこれ迄の結果と違いはない。現在、培養液中に種々の物質を添加し、その表現形質の変化に対する効果を見ているが、dibutyryl
cyclic AMPとtheophyllineを同時に加える事により細胞の突起の数、長さが増大した形態的に分化した神経膠細胞に似たものが出現するという結果を得ている。尚、本実験は今続行中である。
2)ラット肝由来の細胞系(RLC-10)に、肝実質細胞のマーカー酵素の一つ、glucose-6-phosphatase(G6Pase)活性が正常肝の約1/2存在する事を前回報告したが、吉田腹水肝癌の培養系(JTC-1、JTC-2、JTC-15、JTC-16)及び4NQO処理したRLC-10について、同様の方法で、G6Pase活性を測定したところ、いずれの細胞系についても正常肝の1/2〜1/4の活性が認められた。この事は今の活性測定系が、非特異的なphosphataseをも測定している可能性を示唆するので、今后特異的なG6Pase測定報を考える予定である。