【勝田班月報・7209】
《勝田報告》
JTC-15株細胞(ラッテ腹水肝癌AH-66)よりのColonial clones及びClonesの可移植性と軟寒天内増殖能との関連性について
N0.7203の月報において、JTC-15の復元成績のまとめを報告したが、そのとき、クローンを作ってその性質を色々と検討中であると附記した。この実験は完全にはまだ終了していないが、かなりのデータが得られたので、今月号で中間報告することにする。
 1)軟寒天法は、豊島製の径5cmのplastic dishを用い、6系を得た。
 2)液体培地法は、LINBRO製のトレー(凹みの径約8mm)を、初めは液量を各0.5ml宛のうすい細胞浮游液を各凹みに入れ、顕微鏡上で、たしかに1コだけ入っているという穴にマークし、次第に液量を増した。これからは4系のClonesが得られたが内1系は死滅してしまった。 フラン器はいずれも炭酸ガスフラン器である。
 (表を呈示)原株及び軟寒天のクロンは10、100、1000個とまいた結果の平均値で、高いもので42%、低いものは8%以下であった。液体培地クローンは1000個のみコロニーを形成し、0≒3.6%、7.4%であった。以上のように、軟寒天内コロニー形成能とは関連性が認められない。寒天コロニー4などは軟寒天で拾ったコロニーであるのに、軟寒天でPEが低く、可移植性も低いという結果になった。

《梅田報告》
 安村先生の話で、Soft agar法で、100万個cells/plate位の大量の細胞数を植えこむと、normalと思われる細胞もcolonyを作るにではないかと云われていた。それ故ハムスターの胎児培養細胞に発癌剤投与後なるべく早くsoft agar中でcolonyを作らせ、発癌の指標に出来たらと云う目的で以下の実験を行った。
 ハムスター胎児単層培養を9cmのpetri dishに作成後、細胞が1/4位のガラス面をおおった培養1日目に、(A)3.4benzpyrene 10μg/ml、(B)4HAQO 10-5乗Mを夫々投与した。2日後Control培地に交新したが、その時は(A)はそれ程障害は強くなく細胞はガラス面の2/3をおおっていた。(B)は細胞障害が強く1/5をおおっていた。
 Controlは培養4日后、(A)、(B)は増殖が回復した培養13日后に100万個cells/mlの細胞数でsoft agarにうつした。Soft agarは0.3%のagaroseをbase layerに、0.2%のagaroseをseed layerとした。(agaroseはドータイド製)
 夫々2週後に観察した所共にcolony形成はなかったので、seed layerの所を再び培地で洗い、9cm petri dishにまいた。controlの細胞の増生は良く、(A)(B)は徐々に細胞が増生し、20日后には(A)では50ケ位のcolonial growthが認められ、うち4ケはdense colonyであった。(B)は輪かくのはっきりしないやはり50ケ位のcolonyを作り、dense colonyはなかった。この細胞も再び同じ様な方法でsoft agarに移し、2週間培養した。
 結果は全く陰性で、colony形成はなかった。
 別にsoft agarでなく継代した系では、(A)は既にmorphological transformationが認められている。(B)ではその様な所見は今の所見られない。
 以上soft agarの方法はinoculumを上げてもcolonyを作らない段階があると結論された。
《高木報告》
 1.培養内悪性化について
 硫安により塩析して作製したserum factor freeの血清を用いsoft agar cultureを行ったところ、全くcolonyが出来なかったため今回は液体培地を用いてplating efficiencyを調べた。正常細胞としてRFLC-5、腫瘍細胞としてRRLC-11を使用した。
 1)培地はMEM+10%CSを用い、6cmのPetri dishに180ケの細胞を植え込んだ。用いた血清は次の3種であった。 (1)1/1CS:限外濾過を行いMEMで元の量になるまでうすめたもの。(2)1/3CS:硫安1/3飽和後血清をPBSで2日間透析した後限外濾過を行い、MEMで元の量にもどしたもの。(3)1/2CS:硫安1/2飽和後、上記1/3飽和と同様に処理したもの。
 (表を呈示)結果は表の如く、1/1CSを用いた場合のRFLC-5およびRRLC-11細胞のPEはそれぞれ24.0%、3.3%であり、これまでの無処理血清を用いた実験のPE、すなわちRLFC-5約80%、RRLC-11約50%と比較すると可成り低かった。これは、この実験では再生したFalcon Petri dishを用いたことも影響したかも知れないが、血清を処理したことによる影響が主であると考える。
 又この血清を用いてsoft agar cultureを行った所、先に報告したように白色の沈殿物を生じたので、次に硫安塩析後、蒸留水で透析を行い、また3種類の培地について検討した。
 2)培地はMEM+0.1% Bactopepton(BP)、199、F12の3種を用い、これに血清をそれぞれ10%添加した。用いた血清は以下の如くである。(1)control CS:無処理の血清。(2)1/1 CS:限外濾過後Hanks液で元の量にもどしたもの。(3)1/3 CS:硫安1/3飽和血清を蒸留水で2日間透析した後限外濾過を行い、Hanks液で元の量にもどしたもの。
 (表を呈示)結果は表に示す通りである。RRLC-11はPetri dishあたり180ケの細胞をまいたが、RFLC-5はPetri dishあたり900ケの細胞をまいたので、MEM+BP培地ではcolony数は数えられなくなった。しかし199およびF12培地では、全くcolonyを生じなかった。RRLC-11細胞についてはcontCSと1/1CSとではPEには有意の差はないように思われたが、生じたcolonyの大きさは1/1CSでは明らかに小さく、限外濾過を行うことにより細胞増殖にあずかる因子がある程度失われるようである。さらに培地条件を検討中である。
 2.RRLC-11細胞の放出する毒性物質
 RRLC-11細胞を培養した毒性培地を56℃、65℃および75℃に30分おいてこれら温度の効果をみた。(図を呈示)図に示す如く56℃30分では活性は保たれ、65℃30分ではやや失われ、75℃30分では完全に失活した。
 先に報告した如く65℃、75℃、60分ではいずれも完全失活した。

《山田報告》
 この夏は、いままでの仕事の整理やら、Paper書きに追われて過して居ます。近くCell electrophoresis(細胞電気泳動法)の単行本も出版の予定です。(小生は編集及び執筆)
 従来の仕事の残務整理を兼ねて、4NQOにより発癌したラット肝培養株を材料の出来次第randomに検索しています。今回は図に示す様な三株(CQ68/RTC、C10/RTC、CulbTC)について、その後の泳動度の変化を調べてみました。今回はどういうわけかノイラミニダーゼが作用しにくく、特にCulbTCの成績はどうも理解がつきません。(ラット赤血球も同時にノイラミニダーゼ処理して、その対照として検索しています。) C-10/RTCのみが従来の悪性化のパターンを示して居ます。
 4NQO作用後かなり日数が経っていますので、Cell populationの変化を生じたのかもしれません。出来ればこの点もう一度調べたいと思って居ります。(図を呈示)
 テレビ・ヴィデオテープ記録装置を電気泳動装置に組みこみました。この装置は従来の泳動装置に通常家庭用に発売されているヴィデオコーダーを組合せたもので、意外と便利で重宝しています。従来の細胞電気泳動度を測定する際には、すべて顕微鏡をのぞいて測定して居たのですが、その視野がテレビの画面にうつりますので、測定するのが楽であり、しかも記録されるので、幾度でもくりかへしみなほすことが出来ます。しかも細胞の動きを速くすることが出来ますので、運動の状態を細かく分析が出来ます。ヴィデオの撮影装置と顕微鏡の接着の部分を改良して従来の写真記録も自動的に出来る様にしてあります。 次回の班会議にはこのヴィデオを持参して御覧に入れたいと思って居ます。

《堀川報告》
 私共は以前にマウスL細胞をγ-線で反復照射することにより放射線抵抗性細胞を分離し、その出現機構及び抵抗性細胞の遺伝的特性等の解析を試みたが、今回は材料と方法を変えてヒト子宮頚癌由来のHeLaS3細胞より、X線感受性および抵抗性細胞を分離することを試みた。これは哺乳動物細胞におけるX線感受性支配要因(障害と回復能)を解析するにあたり、最も好材料と考えられるからである。
 まず感受性細胞株の分離はUV感受性細胞分離にあたって用いた方法に準じて、以下に述べる方法で行った。HeLaS3原株細胞を変異誘発剤MNNGで24hrs処理し、ついで正常培地で培養を行い、7日後に得られた細胞の各々100万個に対して、0、100、200、300または400RのX線を照射し、直ちに10-5乗M BUdRを含む培地中で培養する。4日後に可視光線(60W)を2hrs照射したのち、再び正常培地中で培養し、3週間後に培養瓶中に形成されるコロニー数を算定する。このようにしてMNNG処理−200R照射群から7個、MNNG未処理−200R照射群から4個のコロニーが出現し、合計11個のクローンを得たが、これらについてX線に対する感受性を検討したところ、HeLaS3原株細胞に比べて高感受性を示したのはMNNG処理群から出現した1クローン(SM-1a株)のみであった。
 一方X線抵抗性細胞の分離にあたっては、あらかじめMNNGで処理した1,000万個のHeLaS3原株細胞に2000RのX線を照射した。そして約2ケ月後にMNNG処理群から4個、未処理群から1個のコロニーが出現したが、これら5個のクローンについてX線感受性を検討した結果、MNNG処理群より分離した1クローン(RM-1b)のみがX線に対して抵抗性を示した。以上分離されたSM-1a株とRM-1b株の、コロニー形成法によって得た線量−生存率曲線を図に示す(図を呈示)。またHeLaS3原株細胞をも含めてX線に対する感受性を表にまとめた(表を呈示)。これら3種の細胞株について染色体数の分布を調べた結果では、Modal numberはHeLaS3細胞では68本、SM-1a細胞では64本、RM-1b細胞では67〜69本という結果を得た。また成長曲線から各種細胞の倍加時間を求めたが、HeLaS3、RM-1b細胞で20.8時間であるのに対し、SM-1a細胞では27.2時間という長い倍加時間を示した。現在SM-1a、RM-1b両細胞株における細胞内非蛋白SH量ん差違や、化学発癌剤4-NQOならびにUVに対する感受性の検討等を行っている段階である。

《乾報告》
 MNNG投与初期におけるRNApopulationの変化
 先に月報7204号でMNNG投与によって悪性転換した細胞のRapidly labeled populationは正常のそれと異なる事を報告した。
 我々はRNApopulationの変異が、MNNG投与細胞においていつあらわれるかを追求する目的で、MNNG 10μg/ml投与後96時間の細胞についてDNA-RNA Hybridizationを行なった。薬剤投与後4日、障害を受けた細胞の再増殖時のHybridizationの結果は次の如く要約された。MNNG-treated cellのlabeled RNAを使用した場合は実験結果に非常にバラツキが多い。正常細胞のRNAを使用した時は、coldの正常RNAが、coldのMNNGtreated cellのRNAより多く拮抗した(図を呈示)。
 この結果よりMNNG処理後4日目の細胞のRNAは、正常細胞RNA populationの一部を欠如していると考えたい。しかし、un-labeled RNA/labeled RNAの高い実験は現在施工中であるので、その結果を待ち結論したい。
 8月下旬より11月下旬迄渡欧致しますので、10月の月報は13回International Congress of Cell Biologyのtopicsを御報告致したく思います。

《黒木報告》
 §平板寒天Agar Plate培養について§
 レプリカ培養のために開始した寒天表面コロニー形成法(以下、平板寒天又はAgar plateと称す)が、その後、多くの細胞に応用できることが分った。
 (表1、2、3を呈示する)表1は、浮游状で増殖する細胞(FM3A、L5178Y、YSC、Yosida Sarcoma・Primary culture)の成績である。株化された細胞は70%近い高いPEを示す。吉田肉腫の初代培養では軟寒天よりもいいPEである。
 表2で、壁につく細胞(HeLa、L、V79、CHO、JTC-16)もふつうの液体培地のコロニー形成法、軟寒天法とほぼ同じ率でコロニーを作り得ることが明らかになった。
 表3からBHK-21/C13のポリオーマ、RSVによるtransformantはコロニーを作るが、もとの細胞Revertantは作らないことが分る。この方法はtransfomationのassayにも使える。

《野瀬報告》
 Alkaline Phosphataseの精製
 Alkaline phosphatase(ALP)-Iに対する抗体を作るため、この酵素の精製を試みている。用いた材料は、臓器の中でも比活性の高いRat Kidneyで、表に示した手順で精製を行った(表を呈示)。各stepでの比活性の上昇は次表に示してあるが、組織のhomogenateはかなり大きなfragmentを含むので、Deoxycholateによって顆粒に結合しているALP-Iを可溶化した方が良いようである。Triton X-100やUreaでは可溶化できなかった。ここで言う可溶化とは6,000Xg、5minの遠心により上清に残るという意味で、この上清を、Glycerol gradient(10〜30%)の上にのせて、SW50Lローター、34,000rpmで60min遠心すると、ALP-I活性は早く沈降する部分に大部分きてしまい、完全な可溶化とは言えない。次のstepのn-Butanolによる抽出で、比活性は約2倍に上昇し(図を呈示)、図で見られるように、この条件の遠心ではTopの分劃に回収された。このn-Butanol抽出液は凍結するとaggregateをつくり、ALP-Iは沈澱するため、直ちにSephadexG-200(1.8x40cm)のカラムにかけてゲル濾過を行なった。この時の抽出パターンが図2に示されている。このカラムでBlue Dextran(分子量約2.0x10の6乗)はFraction 9〜10にかけて溶出され、この付近がvoid volumeであるが、ALP-Iもこの位置に回収された。
 表1でpeakの位置にあるALP-Iの比活性はn-Butanol抽出液とくらべ約4.1倍に上昇しているが、Sephadexのパターンから見ると、ALP-Iはまだ完全に可溶化されてなく、分子量50万以上のparticulate又はaggregateとして存在しているようである。このため、SephadexのFraction 9〜10を更にdisc gel電気泳動(pH8.6および9.5)にかけても原点から全く動かなかった。これ以上の可溶化の試みとして、n-Butanol抽出液を、DOC、SDS、TritonX-100、Neuraminidase、PhospholipaseCなどで処理したが何れの場合もALP-I活性は、void volumeの位置から動かず現在、これ以上の精製はできていない。今後、更に別の方法を用いて、ALP-I complexをdissociateさせる条件を探す予定である。

《佐藤茂秋報告》
 培養されたマウスのグリオブラストーマ細胞が、脳に特異的な生化学的マーカーであるC型アルドラーゼを保持している事はこれ迄報告してきた。他のグリオーマの培養株がこのマーカーを持っているか否か調べる為、N-ニトロソメチルウレアでラット脳内に誘発され、培養株となっているグリオーマ細胞、C6細胞についてアルドラーゼの分子種を電気泳動で調べてみた。この細胞も、A型とA-Cハイブリッドを示しC型もうすいが認められた。この細胞株は、グリアのもう一つのマーカーであるS-100蛋白質をもっている事は既にわかっている。又、マウスの神経芽細胞腫瘍の培養株であるC1300のクローン、N18では、A型アルドラーゼとわずかにA3C1ハイブリッドが認められるが他のA-Cハイブリッド及びC型は検出されず、グリオーマとはアルドラーゼの分子種のパターンが異っていた。ヒトの神経芽細胞腫におけるアルドラーゼのパターンもA型とA3C1ハイブリッドのみであると報告されている。従来C型アルドラーゼは脳、神経組織に特異的と言われて来たが、神経細胞起原の腫瘍細胞がC型をもたない事実は、脳組織におけるC型アルドラーゼがグリア起原であるかもしれない事を示唆する。あるいは正常神経細胞はC型アルドラーゼをもつが腫瘍化した細胞ではC型が発現しないのかもしれない。神経芽細胞腫の培養株はin vitroで、種々の条件により生化学的又は形態学的な分化を示す事がわかっているが、C型アルドラーゼも誘導されるかもしれない。この方面への研究の展開を考えている。

編集後記


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