【勝田班月報・7304】
《勝田報告》
長期間継代中におけるラッテ腹膜細胞株(RPL-1)の染色体構成の変化(表を呈示)
RPL-1株は生后1月のJAR-1系、F15♀ラッテの腹腔をトリプシン消化して得られた腹膜細胞の株である。1962-4-12培養開始、1963-2-9の検索では染色体数modoは42本で、核型は殆ど正常であった。ほぼ10年后の1972-4-15の核型では、正常にはないSubmetaとLargemetaが少数ながら観察された。染色体数modoは41〜44本であった。このように、核型の上からもかなり安定した細胞であるので、今後の発癌実験に大いに使いたいと考えている。
《乾報告》
化学発癌物質中、同時に突然変異誘発能を有する物質の多くは、動物実験ではもとより、試験管内においても直接的に細胞毒性を示すと共に細胞にtransforming
Activityを示す。一方、発癌性芳香族炭化水素、芳香族アミン、多くのニトロソ化合物等は生体内で代謝された後、活性化され発癌性を有する中間産物になると考えられin
vitroにおいて、発癌実験に用いるにきはめて不利な発癌剤である。
黒木班員は、芳香族炭化水素の活性化誘導体を用いて、エポキサイド型のものが培養細胞に発癌性を有することを証明した。
先に我々はニトロソ化合物の試験管内発癌実験を試みたが、ニトロソグアニジン系のものを除き、Dimethyl-、Diethylnitrosamine(DMN、DEN)での発癌実験には失敗した。
今回、初期細胞毒性と発癌性の関連を追試する目的の基礎データをとるため、DMN、DENを含む8種のニトロソ化合物の細胞毒性をハムスター細胞を使用して検定した。その結果、N-Methyl(Ethyl)-N'-nitro-N-nitrosoguanidineの2種のニトロソ化合物は10μg/mlで細胞に強い毒性を示したが、動物実験で発癌性の認められるDimethylnitrosamine、Diethylnitro-samine、l-nitroso-piperdine、nitrosdiallyamine、N-nitroso-dibuthylamine、又発癌性の認められないDenitrosoguanidineは1mg/mlの投与によいても細胞毒性が現れなかった。
一方においてニトロソ化合物、特にDimethylnitrosamine(DMN)、Diethylnitrosamine(DEN)の動物体内での活性化の機構はよく研究されており、生体の肝臓でDemethylationされ何段階かの中間物質をへてジアゾアルカンになり、この物質がDNA、RNAのグアニンの7位の位置をMethyl化して発癌性をもつとされている。
現在我々はNitroso化合物の内DEN、DMNの二つの物質を選び、試験管内でこれらの物質を活性化し、in
bitroにおいて発癌の系を確立する目的で次の実験を行なっている。
即ち細胞にHamster Fibroblastを用いMEM+10%C.S.の条件でこの細胞を培養し、表の条件でとったHamsterのLiver
FractionをDEN、DMNと混合作用し、実験を経過中で、現在の処次の結果を得ている(表を呈示)。
過去の実験でLiver Fraction自身に細胞毒性が知られているので、F1〜F3Fractionについて、1ml中の蛋白含有量を1mgより対数的に0.31μg/ml迄8段階に分け、Hamster細胞を3日間Incubateした。脱核のみした細胞質の全FractionとみなされるF1では、蛋白量1mg〜100μg/mlで明らかな毒性がみられ、31.1μg/mlでもやや毒性が出現した。
F2 Fraction作用では前者に比し、細胞毒性はやや強く蛋白量10μg/ml作用群においても細胞毒性がわずかに認められた。
F3 Fraction毒性は前二者よりさらに強く、10μg/ml作用において著明な毒性3.1μg/ml作用においても細胞毒性が表われた。
以上の結果より、添加する蛋白量を各々20μg/mlと一定にして実験を進め、これにDMN、DENを同時に1mg/mlより0.31μg/ml作用して細胞毒性を検討中であるが、F1
Fraction+DMNでは10μg/ml、31μg/mlで細胞毒性の加算が表われ、DEN投与では毒性度に変化がなかった。F2
Fractionの場合3.1μg/ml DMN投与で細胞毒性が著明で、細胞毒性効果の加算が認められた。DENではこの差が認められなかった。F3
Fraaction+DEN、DMNの系では、今の処毒性の加算効果ははっきりと認められない。
以上の結果より、生体肝の酵素系(おそらくhydroxylase)によりDMNが活性化され、細胞にActiveに働く中間物質が試験管内で生成されると考えたい。今後、蛋白量とNitroso化合物の作用量の関係を追究した上で試験管内発癌の系を確立して行くつもりである。
以上の研究と試験管内発癌過程における染色体Banding
Patternの変化を本年追究したいと思っています。
猶、この3月31日付でもって、11年間御世話になりました癌研究所を退職し、4月1日より専売公社に新設される生物実験センターの組織培養部に移ることになりました。新研究所は10月1日より発足致しますが、この間半年今迄通り癌研に研究の場を置き研究させていただくことになり、新研究所のスタッフの約1/3も癌研究所高山研究室にお世話になることになりました。本年は雑事で少々能率が落ちるかと存じますが、皆様の御好意で研究を続けられそうです。どうぞ今後共よろしく御指導下さい。
《堀川報告》
HeLaS3細胞、またこれから分離したUV感受性のS-2M細胞、マウスL細胞、さらにはChinese
hamster CH-hai N12細胞を、放射線および各種化学薬剤で処理した際、8-azaguanine抵抗性という変異細胞がどのように出現するかを解析するための予備実験として、まずマウスL細胞を用いてX線照射後、変異細胞としてfixation
and expressionされるためにどの程度の時間を要するかを決定した。
まず培養ビン当り、100万個のL細胞を500Rで照射し、その後経時的に取り出して9cmシャーレあたり10万個づつの細胞になるようにして、10μg/ml
8-azaguanine培養液中で16日間それぞれ培養する。対照群として500R照射しないものについても同様の操作をおこない16日間培養した後のシャーレ当りに出現する8-aza対抗性コロニー数を算定して、mutation
frequencyを計算した結果が図1である(図を呈示)。この図からわかる様に、未照射群に比べて500R照射群のmutation
frequencyは明らかに高くなることがわかり、同時にX線照射によって出現する8-aza抵抗性のfixation
and expressionには照射後72時間位かかることがわかった。
さてこの様にしたデータを基にして、各種線量のX線を照射した後に、マウスL細胞からどの程度8-aza抵抗性細胞が出現するかを検討した結果が図2である(図を呈示)。まず、100万個づつのL細胞を各種線量のX線で照射し、fixation
and expressionのために72時間37℃で培養した後、10万個づつの細胞を10μg/ml
8-azaを含くむ培地中で9cmシャーレ内で培養する。16日間培養した後、シャーレ当りに形成された抵抗性コロニー数を算定し、これからmutation
frequencyを計算する訳である。
この図からわかるようにX線の照射線量に依存して、L細胞の生存率は当然低下するが、一方10万個生存細胞数あたりに出現する変異細胞(8-aza抵抗性細胞)数は、照射線量に依存して増加することがわかる。しかしこれらの誘発変異率曲線は決して直線的ではなさそうである。こうした結果は、Arlettら(1971)がChinese
hamster細胞で得た結果とよく一致している。なおTTdimer除去能などの点でマウスL細胞とはまったく異なった動態を示す前記各種細胞についても同様の検討が加えられているので、これらについてはまとめて、そのうち報告する予定である。
《梅田報告》
前回の班会議で試験管内発癌の仕事をするにあたって、自然悪性転換率が高い細胞でも発癌剤投与後の悪性化率をうまく表現すると、その図から悪性化を誘発したと結論され得る可能性を報告した。そこでそのようなことが示せる細胞探しから仕事を始めた。
(1)目下我々の研究室で無処理のハムスター胎児培養細胞の長期継代例が2例ある。そこで之等についてplating
efficiencyを調べた。K2B細胞は既に2年半培養しているもので1年半前に1回cloningしたことがある。ハムスターに1年前に復元したが、腫瘤は作らなかった。
HE細胞は丁度9ケ月半培養を続けているもので、cloningしたことはない。復元実験は行ってない。共に同時に4NQO等発癌剤を投与して悪性化した又はしたと思われる細胞に比べ増殖率は遅く、1週間で3〜10倍になる。
(2)plating efficiencyは、表に示す如く(表を呈示)、既に2年半も長期継代しているK2B細胞は9日間培養で約50%を示した。小コロニーではあるが境界のはっきりした類上皮性の細胞から成る。Conditioned
med.としたものは、1日間培養のConditioned
mediumとfresh mediumと1:1に混じたものであるが却ってPEは下がった。理由はわからない。
HE細胞ではPEは悪く、又いまだmixed populationなのでコロニーの形態もまちまちで、あった。この場合conditioned
mediumにしたものでのPEは上昇した。新しく培養し始めのハムスター胎児培養細胞では、更に悪いPEを示し、形態も更に多彩な像を示した。これもconditioned
mediumにするとPEが上昇した。
(3)次に上のPEを参考にして細胞数を定め、シャーレに植えこみ、1日後DMBAを投与して更に9日間培養して後固定染色してPEと夫々のコロニーの形態を観察した。DMBAは0.2μg/ml、0.1μg/mlの2濃度を選んだが、この濃度はラットのfeeder
cellを使ってのハムスター胎児培養細胞の試験管内発癌実験の仕事ではPEは数10%下り、悪性転換率は数〜10%誘起される濃度である。
(表を呈示)表に示す如く、K2B細胞にDMBAを投与すると、PEは殆んど変らず、K2B細胞はややDMBAに抵抗性がある様な感じを与えた。コロニーの形態も観察したが、pile
upした悪性と思われるものは見出されなかった。
(4)(2)で示した如くHE細胞はConditioned
mediumを使わないとPEが低いのでfeeder cellを使うことを考えた。しかし我々の研究室ではX-rayをかけるのが不便なので、出来れば薬剤処理で同じ効果を得る方法を考えた。そこでリンパ球培養を行っている人がよく行っているマイトマイシンC処理の方法を行ってみた。
先ずラット胎児培養細胞をトリプシンではがし細胞浮游液を作り、MitomycinCを25μg/mlになる様に加え20分37℃培養し、後良く洗滌して50,000細胞/シャーレの割合でまいた。1日後再び細胞を洗ってから500細胞/シャーレのHE細胞をまき、更に1日後DMBAを投与した。表に示す如くmitomycinC処理ラット細胞があるにも拘らず、PEはfresh
mediumにじかにまいた(2)の結果と同じ程度でありコロニーも非常に小さくてfeeder
cellをひいた効果は現われていなかった。因みにラットの細胞は細胞質をひろげ丁度X-rayをかけたfeeder
cellのような形態で培養期間中保たれていた。悪性化を思わせるコロニーの形成も認められなかった。
(5)目下DMBAを何回もK2B cellに投与する実験、ラット胎児培養細胞にβ-propiola-ctineを投与してfeeder
cellになるかどうかの実験を実施中であり、更にHEなりfreshHEなりからcloningで目的にあうコロニーを拾うことを計画している。
《高木報告》
1)培養内悪性化の示標について
平板寒天法に1/3血清を用いて、医科研癌細胞部よりいただいたRLC-10、CulbTC、JTC-16細胞株についてCFE(%)をみた。培地はいずれもLD+0.1%Bactopepton+10%血清で、寒天濃度は0.5%である。結果は次の通りであった(表を呈示)。
JTC-16は処理しない対照血清を用いた場合26.6%のCFEを示したが、1/3血清ではcolonyを形成しなかった。またCulbTCは両血清ともcolonyを作らなかったが、これは植込みの際細胞をtrypsinizeしたことも影響しているのではないかと考える。正常細胞であるRLC-10は寒天内で増殖出来ないようである。以上これまでの処、寒天培養法で1/3血清を用いて培養内で癌化細胞を同定する試みは良い成績がえられていない。最近、精製した硫安を用いてきれいな1/3血清がとれたので再検する予定である。一方1/3血清を用いて化学発癌剤処理後悪性化した細胞を早期に分離できないか検討しつつある。発癌剤としてはMNNGを用い、細胞はRFLよりクローン化したC-3細胞をさらに3回colony
selectionしてとった3C3細胞を使用してMNNGの処理条件を検討している。現在行なっている方法は、20万個/MA30の3C3細胞を継代24時間後に、MNNGで2時間処理する方法で、処理時には顕微鏡下ではやっと少数のmitosisがみられる状態で、その時の細胞数は植込み時のそれと大差がないものと考えられる。MNNG
10-4乗Mと5x10-5乗Mを2時間処理したところ処理細胞は完全に死滅してしまった。MNNG
10-4乗Mは14.7μg/mlに相当しており、以前に行ったMNNGの発癌実験では10μg/ml、1μg/mlで悪性化に成功した訳であるが、今回は細胞数が少ないためがMNNGの毒性効果が強く出てしまった。さらに濃度をうすめて実験の予定である。
2)ラット膵ラ氏島細胞の悪性化実験
月報7301で一寸ふれたが6-diethyl-aminomethyl-4hydroaminoquinoline-1-oxide(6DEAM-4HAQO)をラットの尾静脈から注射すると、高率に膵ラ氏島に腫瘍を生ずることが林により報告されている。
最近6DEAM-4HAQOを入手出来たので、まず16疋の生後4週のラットに週1回20mg/kgを8回注射した。来週から生後3〜4週のSDラットに、同様に注射する予定である。10〜20mg/kgを注射後大体400日で膵ラ氏島に高率に腫瘍を生ずるが、大量にたとえば40mg/kg同様に注射すると糖尿病がおこってラットは死亡する可能性が高くなる。この催糖尿病作用と造腫瘍作用とが量的な違いによりおこると云う点はきわめて興味深い。注射が終った後約1年は大切にラットを飼育しなければならない訳で、さしあたり正常膵島と腫瘍性膵島との形態学的、もしくは機能的相違を膵ラ氏島単離法を応用して検討したい。また膵ラ氏島細胞の、organ
cultureからcell cultureをする努力をし、培養した細胞に6DEAM-4HAQOを作用させてin
vivo、in vitroを比較してみたいと考えている。
3)RRLC-11細胞の放出するvirusについて
その後行った実験で、1)C-5細胞のcell sheetに作用させても、plaqueは形成しない。2)このvirusをC-5細胞の植えつぎと同時に作用させると、細胞は1〜2日増殖を示し、3日目頃から急速に変性をおこすが、full
sheetに作用させると中々変性をおこさず少なくとも1週間は細胞はそのままの状態でガラス面に附着している。3)このvirusはetherに耐性であること。4)細胞のこのvirusに対する感受性に関して、Haylickん人二倍体細胞WI-38は全く変性をおこさないが、他部局からもらったHeLaはやや変性をおこす。この点再検中である。
CulbTCは変性をおこす。・・・などのことが判った。
《山田報告》
引続きConA及びNeuraminidase、更に(But)2
cAMPのラット肝及び肝癌細胞への作用、特に相互の作用の拮抗について検索しています。
今回は培養したAH-66F株について日を追って検索してみた結果を報告します。実験群にはioculateした翌日より0.5mM/m(But)2
cAMPをメヂウムに加えた細胞ですが、今回の細胞の増殖をみると、かえって促進されている様です。しかしConA及び(But)2
cAMPの反応は対象群にくらべてかなり異りました(表1、2を呈示)。
(But)2 cAMPを含むメヂウムで培養されたAH-66Fは、ConAに対する反応が弱く、対象細胞ではその泳動度が上昇するにかかわらず、むしろ低下しました。即ち、悪性腫瘍細胞とは異る反応を示しました。また低濃度のConAの反応はその細胞の状態により反応する至適濃度が異ることも知りました。
次にin vitroで1mMの(But)2 cAMPを反応させますと、対象細胞は3、4、7日目に著しく反応して居るにかかわらず、(But)2
cAMPを含むメヂウム内培養のAH-66Fではかへって減少して居ります。
Neuraminidase処理後、1mMの(But)2 cAMPを反応させると対象細胞と共にいづれも泳動度が上昇しますが、その程度は対象細胞に特に著明です。
(But)2 cAMPが膜にどの様な変化を惹起するのか、いまだ明らかではありませんが、特に悪性化に伴う変化の一つとして、(But)2
cAMPの感受性の変化が悪性の指標になる様に思えて来ました。現在培養正常ラット肝細胞について検索中です。その結果ならびに基礎実験を続けて、(But)2
cAMPの膜に対する直接作用を更に分析したいと考えています。
《藤井報告》
凍結から戻したCulb-TCが一向に増殖せず、じっと養いつづけている状態で、この班での仕事ができておりません。
リンパ球-腫瘍細胞混合培養反応で、マウスのMC-発癌過程で宿主リンパ様細胞が、MC腫瘍に対して、どのような腫瘍抗原認識反応を示すかを調べていますので、その結果を述べます。実験は、C57BLの皮下にMC
0.1ml(ラッカセイ油にとかす)を注射し、注射后1、2・・・5月のマウスの脾細胞と、発癌MC肉腫細胞(8,000R照射)と混合培養し、その后、被刺激リンパ系細胞のH3-TdR摂取をみます。
結果:(1)同系腫瘍に対し、脾細胞は反応する。(2)MC注射后1月辺りで、MC肉腫細胞に対する反応が低下するが、その后発癌前期、発癌期(触知しうる意味で)に上昇する。(3)発癌后(担癌期)に低下する。(4)非担癌期の反応はおそく、担癌、発癌期の反応ピークは早期にある。これらは、免疫学的認識機構と発癌に関し、一応面白い成績ですが、さらに確かめてみます。(図を呈示)
《黒木報告》
L5178Y細胞及びその紫外線感受性クローンの傷害修復機構について
紫外線によるDNA傷害の修復をみる技術として
(1)thymine dimerの測定
(2)unscheduled DNA合成(autoradiography)
(3)H3-BUdRなどのsemi-conservative DNA合成以外へのとりこみ
(4)single strand excisionの検出
などがあるが、これらのうち(1)と(3)が理論的にもはっきりした技術と云える。そこで(3)のH3-BUdRのとりこみから実験をすすめた。
その原理は図を呈示する。図のようなreplicating
forkで、semi-conservative DNA合成にとりこまれたBUdRは、その量が多いため比重が約1.750になる。しかしrepairにとりこまれたBUdRは、その量が全体に比して小さいため、比重はnormal(ρ=1.700)である。したがってもしexcision
repairがあればH3-BUdRのradioactivityはρ=1.700附近に見出されるはずである。実験のscheduleを図で示す(図を呈示)。
DNA抽出:cell pelletをSSCで1度洗ったのち、1%SDS
in SSCで10分間lysisさせる。pronaseを1mg/mlに加え37℃に1時間おく。-20℃に冷やした2ethoxy
ethanolを等量、重層させ、ガラス棒で静かにかきまぜると、DNAはjelly状に析出、ガラス棒でつりあげSSC中に溶解させる。完全にとけたのち、等量のクロロフォルム:イソアミルアルコール混合液(24:1)を加え、shaking遠心して除蛋白する。この方法できれいなDNA(OD
260/280:1.8〜2.0)を、500万の細胞から約50μgとることができる。
CsClで28,000rpm 65時間分離後、30〜40分劃にbottomより分劃する。radioactivityは、ガラスfiver
filterに吸着(5%TCA ppt)させて測定した。比重は、屈折率より計算した(ソニーcomputer)。
結果は50、100、250、500ergの照射のいずれでも、ρ=1.70附近へのピークがみられなかった(図を呈示)。このことはL5178Y細胞が切り出し修復以外のメカニズムで修復しているものと思晴れる。例えば、post
replication repairなども考えねばならない。なお、FM3A、L5178YSB-3、L5178YSB-5の三種の細胞も同様のprofileを示した。ただし、HeLa細胞はρ=1.70附近にpeakを示すので、Cleaverらの云うように切り出し修復をもつのであろう。
考えてみると、皮ふを直接日光にさらす動物はヒト以外にはないわけで、もしあったとしても例えばカバ、ゾウ、サイなどのように厚い皮ふをもつか、キリンなどのように体毛におおわれている。マウスが天井とか穴のなかに住んでいるために、切り出し修復を必要としないのかも知れない。
《野瀬報告》
誘導されたalkaline phosphatase-Iの安定性について
月報No.7210に、But2 cAMPによって誘導されたAlkaline
Phosphatase(ALP)-Iは、But2 cAMPを除くと、半減期約42時間で減少してゆくことを報告した。ALP-Iの細胞内での安定性は、誘導機構の面からも重要な問題と考えられるので、更に実験を行なった。
JTC-25・P5Cl-1細胞にBut cAMP(0.25〜1mM)およびtheophyllin(1mM)を加え4日間培養し、培地を除いてこれらの薬剤を含まない培地を加え、更に培養する。tube当たりのALP-I活性は図1のように減少するが(図を呈示)、同様な4回の実験の結果から半減期は、85、95、98、110時間となり、No.7210の結果より長い値が得られた。従ってBut2
cAMP除去の際のALP-Iの安定性は平均97時間の半減期をもって減少するものと考えられる。But2
cAMP除去により、ALP-Iの合成又は活性化が直ちに停止するのかどうかはこの結果からは決定できない。しかしALP-Iの減衰曲線は数回の実験で、すべて最初の2日間位で勾配が急で以後次第になだらかになってゆく傾向をもっている。従ってBut2
cAMP除去の効果は、直ちに発現されていると考えている。
次に、やはりNo.7211で報告したタンパク合成阻害剤の作用を追試した。But2
cAMP(0.25mM)+theophyllin(1mM)で4日間細胞を処理し、(1)+But2
cAMP、(2)But2 cAMP+cycloheximide(2μg/ml)、(3)+cycloheximideの3群に分け培養を続ける。図2に見られるように(図を呈示)ALP-Iの比活性は、-But2
cAMPでもcycloheximide添加により低下せず、また
+But2 cAMP+cycloheximideでも-cycloheximideと同じく低下していない。しかし図2の結果で、tube当りの結果とすると、+cycloheximideによりALP-I活性は低下し、この低下がタンパクの低下とバランスを保つため、比活性は一定になったと考えられる。cycloheximideは細胞毒性が強いので、このような20時間以上の培養に加えても意味がないのかも知れない。その点を考慮しても、cycloheximide添加(-But2
cAMP)でALP-Iの比活性が40時間以内には、ほとんど変化しないことは、この酵素が細胞内で非常に安定な酵素であると言える。
酵素の安定性を他のタンパクの安定性と比較するためH3-Leuで細胞をラベルし、多量の“cold
"Leu存在下でlabeled proteinsの減少を見たのが図3である。cycloheximideの有無に関係なく、半減期はそれぞれ58時間、84時間であった(図を呈示)。