【勝田班月報・7402】
《勝田報告》
 §肝癌の毒性代謝物質関係:
 1.各種培養細胞のSpermine含量を定量すべく、永井班員の指導の下に進行中である。
 2.ラッテ肝RLC-10(2)株を無蛋白合成培地に移し、これにSpermineと同時にCohnの牛血清分劃Vを添加すると、Spermineの毒性がさらに強化された。この結果を図に示す。2.0mg/mlのところに最も強く見られたのは面白い現象である。
 3.肝癌の毒性代謝物質の活性がpolyamine oxidaseで不活化させられるかどうか、目下実験の準備をしている。
 §発癌実験関係:
 復元接種時に、正常細胞の混在が悪性細胞のtake率に如何に影響するかを調べるため、CulbTC株を動物に継代して使用し正常としてはRLC-10(2)を用いるべく目下準備中である。
《高木報告》
 CytochalasinBの培養細胞に対する効果
引き続き実験を行なっている。前報の細胞の補充実験と、新たに3T3、L、JTC-11(Ehrlich)癌細胞株)細胞につき同様の1、2.5、5μg/mlのCytochalasinを入れて調べてみた。
 ここでは正常細胞としてWKAラット肺由来培養3ケ月のRFL-N2細胞と腫瘍細胞としてJTC-11細胞に対するCytochalasinBの効果を示す(図を呈示)。大体予測の通りRFL-N2細胞は2核にとどまっており、JTC-11細胞では多核細胞の増加が著明である。3T3、Lについては、Lは多核細胞の増加、3T3は一応2核細胞までが多いが、それ以上の多核も認められた。これは、3T3の継代期間がやや不正確であったこと、recloningを行なっていないこと、など関係していると思われる。

《堀川報告》
 HeLaS3細胞の細胞周期を通じてみられる紫外線感受性変化(つまり周期的感受性変化)はどうもUVによってDNA中にinduceされるTTの量の違いで説明できるようで、除去能の周期的違いによるものではなさそうであるということについては、すでに報告してきたが、今回は同様のことを4-NQOおよび4-HAQOについて行った実験結果につき報告する。
 例によって、colcemid-harvesting法によって得たHeLaS3細胞の同調細胞集団を用いて、4-NQO、4-HAQOに対する周期的感受性を調べると、図1および図2(図1、2、3を呈示)に示すように、両発癌剤に対してともにM期からmiddleS期までが感受性期で、その後つまりmiddleS期からearlyG2期にかけて感受性は低下することがわかった。さて、これが何に依存するかを検討するため、H3-4-NQOまたはH3-4-HAQOを同調培養された各期の細胞に取り込ませ、DNAと結合するこれら両発癌剤のactivityを調べると、これも図1及び図2に示すように4-NQOまたは4-HAQOに対してsensitiveなM期からmiddleS期までの細胞内DNAと特異的に結合することがわかった(90分まで処理時間とともにactivityは上昇する)。
 では、このように各期の細胞内DNAと結合したH3-4-NQOがどのように除去されて行くかを調べた結果が図3である。この場合2.5x10-5乗M H3-4-NQOで、各期の細胞を30分間処理した際、どのようにH3-4-NQOがDNAから除去されて行くかを示してある。この図からわかるようにDNAと結合したH3-4-NQOはどの期の細胞からも除去されるが、特にH3-4-NQOと結合しやすい時期の細胞から多く除去される。
従って、H3-4-NQOのpercent releaseをみるとどの期の細胞からも殆んど同じようなrateで切り出される。しかし、最終的にはH3-4-NQOは感受性期のG1期、earlyS期の細胞内DNAに多量に残るようである。何故なら、36時間以上の回復培養をしても、もうこれ以上の除去は認められないから(尚M期についてはH3-4-NQOの処理が30分であるため分析出来なかった。)こうした結果は紫外線の場合と同様に4-NQO、または4-HAQOに対するHeLaS3細胞の周期的感受性差はDNAと結合するこうした発癌剤の量的差異に依存していることを暗示している。従って4-NQOのDNAからの除切には除去修復機構が関与している可能性が高い。尚ここで問題になるのは、今回の実験ではDNAはphenol法で抽出したものについて結果を出してあるが、これをもう少しmildな抽出法に変えて検討する必要があり、現在その方法を使って再確認中である。

《山田報告》
 リンパ球表面における抗原抗体反応とConAの反応:
 細胞電気泳動法による細胞結合性抗体の定量的測定については既に報告しましたが、最近Edelman及びYahara等の報告からヒントを得て、膜表面における抗原抗体反応を全く違った角度から分析しようと思いたちました。
 即ち、蛍光抗体法及び細胞凝集性の検索よりみると、ConcanavalinAと抗原抗体反応はリンパ球の表面上で相互に干渉しあうと云う報告から幾つかのヒントが生れて来ました。両反応は膜の共通部分で反応するのか? 或いは間接的な影響か? 若し相互に干渉するならば、ConAの反応性の変化により逆に抗原抗体反応を推定出来ないか?と云う疑問を基に、まず実験を始めました。
 細胞凝集作用を起さない低濃度のConAを肝癌細胞に接触させると、その表面荷電はbiph-asicに変化し、低濃度のConAによりその表面荷電密度が増加することを報告しましたが、同様な現象が正常細胞である脾リンパ球にも程度は少いですが起こりました(図を呈示)。
 そこで0.001%トリプシン処理(37℃、30分)すると、ラット胸腺リンパ球は図に示すごとく、再生肝細胞以上にConAによる表面荷電密度が増加しました。このトリプシン処理したラット胸腺リンパ球に、家兎抗ラット胸腺リンパ球血清(胸腺細胞10の9乗個x2回感作、200倍稀釋、56℃、30分比活性化)を更に作用させ(36℃、30分)た後の、ConAの反応性をみたのが図2です(図を呈示)。抗血清(比活性)処理したラット胸腺リンパ球の方がより低濃度のConAに反応して、その表面荷電密度がより増加しました。この現象は、ラット肝癌細胞にインシュリン前処理後のConAの反応性によく似ています。
まだこの種の実験を始めたばかりですので、どの様に発展して行くかわかりません。続けたいと思って居ります。

《梅田報告》
 前々回の班会議以後進んだ細胞DNAのアルカリ蔗糖勾配での分析結果を御報告します。
 (1)今迄Elkindの方式にしたがって分析してくると、lysis時間を変えることにより、遠心パターンの動くことが我々の仕事の骨子だったわけですが、DNAとして安定なT even phageではこの条件でどうなるかを調べました。この方法で得られる哺乳動物細胞のDNAの分子量測定の目的もありました。T even phageとしてT4 phageをH3-TdRでラベルしたものを安藤氏より分与を受けました。
 (2)PhageはDNA抽出をせず、そのままlysis液上にのせ、今迄と同じ遠心条件すなわち36,000rpm 90分遠心しました。(夫々図を呈示)図1がその結果で、19℃でlysis、1、2、4、24時間のものです。これでみると2時間迄殆んど遠心パターンが変らず、20〜22本目にピークがあります。すなわち細胞でみられたような遠心パターンの動きは無く特に注目をひくことは、細胞では24時間lysisの時は低分子化を起し、山がtopの方に動くのにphageでは殆んど動きのないことです。
(3)つぎに37℃でlysisさせる実験を行うと図2の如くで、4時間迄は全くピークが動きません。19℃ではピークが20〜22本目なのに、この実験では25〜26本目にピークがあります。24時間後にはtopに、すなわち28本目にピークが移るようです。
 (4)つぎに分子量を決定する目的もあり、main peakの現れる19℃4時間のlysisと、さらに時間をのばして24時間lysisでどうなるか、C14でラベルしたHeLa細胞と、H3でラベルしたphageとを同時にのせて実験してみました。図3でみる如く、この実験結果では19℃4時間lysisの時のHeLaDNAの山が、やや急峻に過ぎる感じですが、phageの山は20〜22本で図1と同じ様な結果です。24時間経つとHeLa細胞のDNAは今迄得ていた結果と同じように山がtopに移るのですが、phageは図1の結果と同じ様に22本目にピークをもったまま動きません。
 (5)さらに37℃lysisで1、2、4、24時間とlysisさせてみりますと(図4)、今迄得たように1〜2時間lysisで細胞DNAの山は動きませんが、4時間、24時間で山は徐々にtopに動きます。一方のphageの山は、図2と同じように、24〜25本目のピークが4時間迄続き、24時間で28本目に動くことがわかりました。常法にしたがって37℃1時間lysisの時のHeLa細胞DNAの分子量をphage DNAの山 (アルカリ蔗糖勾配故、phageDNAが1.3x10の8乗daltonとして、2で割り、6.5x10の7乗がphageの山として計算しました)から計算すると4.6x10の8乗daltonとなりました。
(6)以上の結果で色々の問題が新しく提起され、説明に困っています。(a)PhageDNAが低分子化を起さない条件なのに、細胞DNAは徐々に低分子化を起していたこと。(b)PhageDNAの山は、19℃lysisでは20〜22本目なのに、37℃では24〜26本目に移っていること。
(b)の問題は37℃lysisの時、時間がくるとそのまま直ちに遠心機にloadしていて温度が冷えきらないうちに遠心されている可能性を懸念して夫々の時間がきてすぐ19℃で始めからlysisさせたtubeと一緒に遠心してみました。しかし上の傾向はそのままでした。また、37℃に一晩おいたgradientを19℃に下げ、一方では4℃で一晩おいたgradientを19℃に上げ、phageをのせてから遠心してみました。これも変化がないようです。
 諸先生からの御助言を着に望んでいます。

《佐藤報告》
 T-7)次表はdLa-74(原株細胞)の復元移植実験の結果である。造腫瘍性の程度について、培養日数の浅いもの(219日)と、最近のもの(培養628日以降)を比較して見ると、前者については生存日数が不明であること、100万個以上の細胞数では実験が行われてないこと等から確かなことは云えないが、変化は小さいのではないかという印象である(表を呈示)。
 尚、ラッテはいずれも生後48時間以内のものを使用。
 現在、dRLa-74から得た単個クローンについて、(CL-2株、復元移植中)DAB処理(in vitro)により、悪性度の増強なるか、否か、実験中である。DABの最終濃度は10μg/mlないしは40μg/mlとし『DABはアルコールに4mg/mlに溶き、100%牛血清にて400μg/mlとし、遠心後、その上清を培地MEM+20%BSにて上記の濃度とする』又、悪性度の増強性の判定は、(1)同系ラッテ復元後、腫瘍死に到るまでの日数、(2)腫瘍重量、(3)組織像、(4)転移性などについて、処理群と非処理群(コントロール)との比較により行う。

《黒木報告》
 今年重点的に行なおうとしているprojectは、次のようなものです。
 (1)cAMP結合蛋白とMCA結合蛋白の異同
 10月末のflorenceの第11回国際がん学会で「化学発がん剤の核酸蛋白質との結合」というテーマで、panelistに指名されたので、それに間に合せるべく結合蛋白の分離精製の仕事をふたたびはじめました。前に何度か報告したように、塩基性蛋白は他のホルモンなどの結合蛋白と類似し、ligandinと総称されるものと思はれます。しかし酸性蛋白は、cAMP結合蛋白と2-3stepsのカラムまでは、同一の流出してきます。それから先を、今後、iso-electrofocusingなど使って分離するつもりです。
 (2)紫外線感受性細胞の分離
 FM3A、L9178Y細胞から、レプリカ法によって、7株の紫外線感受性細胞を分離しましたが、それらが不安定であることは、すでに班会議で報告した通りです。現在すすめている仕事の目的は、感受性細胞のなかから、ふたたび、MNNG処理でより安定な細胞を分離すること、chinise hamsterの株であるV79、CHO-K1からUV感受性細胞を分離することです。
 (3)10T1/2を用いたtransformation
 Heidelbergerらによって新たに分離されたcontact inhibitionに感受性で、chemicalsによってtransformableの10T1/2を用いて、AF-2、6OHMP等のtranformabilityをみる積りです。
《野瀬報告》
 ラッテ腎アルカリフォスファターゼの精製
 ALP-Iをrat腎から精製する方法は、前回の班会議で報告したようにn-butanol抽出液を、Sephadex G-200、DEAE-celluloseにかけ、比活性が約250倍に上昇した。この段階では活性のpeakは単一だが、蛋白をdisc gelで泳動させた後、染色すると3〜4本のbandが現われ、酵素として均一ではなかった。DEAE-celluloseの分劃を更にAmpholineによる等電点電気泳動にかけると図1のように2つのpeaksに分れた。最初のpeakはpI 5.1、後のpeakはpI 5.6であった。これらをALP-IA、ALP-IBと呼び、酵素的性質を若干検討した。至適pHはA、B共に、pH9.5、阻害剤に対する感受性は表のようにほぼ似通っていた。β-mercapto ethanolはALP-Iの阻害剤であったが、この酵素では逆に低濃度で促進が見られた。desc gel上でALP-IBはほぼ単一のbandを示した(図表を呈示)。

編集後記


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