【勝田班月報・7409】
《勝田報告》
§新しい合成培地DM-153:
この組成についてはNo.7405の月報にかいたが、その後色々な細胞についてcheckを続けている。細胞の種類によっては、DM-120、-145、-153何れでも略同程度に増殖するものもあるが、RLC-10(2)のように、はっきり差のつく株もあった。(図を呈示)この図でMEMよりDM-145の法が落ちているのはビタミン量、グルタミン量などが大いに影響していると思われる。
《高木報告》
CytochalasinBの培養細胞に対する効果:
前報につづきCCBのRFL-5細胞に対する効果を観察するため、TD-40に100万個細胞を植込み後1日目の培養にCCB
1、2.5、5μg/mlを作用せしめ、作用後1日、2日の細胞数、総核数、総蛋白量およびDNA量を測定して蛋白あたりのDNA量、細胞あたりのDNA量および核あたりのDNA量を測定した(表を呈示)。
すなわち以上の結果からみれば、蛋白あたりのDNA量は0.63〜0.89=0.76≒20%、細胞あたりのDNA量は1日目では+20%〜60%であるが、2日目では+0%、平均核数は1日目で+50%以上、2日目では+200%以上、核あたりのDNAは-23%〜+12%であったが、2日目では-64%以下を示した。2日処理後においては多核細胞の1核あたりのDNA量は無処理対照より著明に減少している。2日目の細胞あたりのDNA量がほぼ一定であることは、多核細胞の形成があるにかかわらずDNAの合成は伴っていないことを意味するものとも考えられる。
なお追加検討中である。
《山田報告》
既報のごとくin vitro carcinogenesisの研究のために、改めて数種のラット肝(胎児、新生児、成熟)から正常肝細胞培養株を樹立しましたが、これを栃木の田舎へ持って来た所、さっぱり増えて来ません。或いはメヂウムが不適当なのか、観察が不充分で適切なメヂウムがえをしなかったのか現在検索中です。なんとか早く増やして実験を再び開始したいと考えています。
そこで今回は、これまで、その一部を報告しましたラット胸腺リンパ球表面における抗血清とConcanavalinAの反応の相互干渉についての成績を、最近のデータを含めてまとめてみたいと思います。
ConAと抗体との膜における相互干渉:
異種抗体(ラット→兎、恐らくは同種或いは同系抗体も同じと思います)のreceptorとConAのreceptorが、胸腺リンパ球表面において同じ或いは近い位置の表面糖鎖に存在し、それぞれの反応が相互に干渉しあう可能性を示す所見です。
(図を呈示)図1は種々の濃度のConA処理により、胸腺リンパ球の電気泳動度は著明な二層性を示さないが、0.001%の薄いトリプシン処理により、また10unitsのノイラミニダーゼ(NANAase)処理することにより、二次的にConAを加えると著明な電気泳動度の二層性変化を示す様になると云う所見です。
図2、種々の濃度の異種抗血清に対する胸腺リンパ球の反応は、低濃度のConAによりその電気泳動度が増加すると云う所見です。これに、あらかじめ0.001%のトリプシン前処理しておくと明らかに電気泳動度の二層性の変化を示す。(この反応は癌細胞の様な上皮性細胞ではみられません。)
即ち、ConAも抗血清も膜の荷電に与える影響に類似な点があると思われます。
図3は0.001%のトリプシン処理をした胸腺リンパ球に、まず一定濃度のConA(2.5μg/ml、25μg/ml)処理し、最後に各種濃度の抗血清を加えてその電気泳動度の変化をみたものです。ConA前処理により抗血清の反応より低濃度の抗血清ににより強く反応し、泳動度の低下を来たす濃度もより薄い濃度の抗血清で起って(反応が強く発現される)来ることを示すものです。但し薄い濃度の抗血清による泳動度の増加率はそれ程に強調されません。
図4は、あらかじめ薄い濃度の抗血清(1/100〜1/200)の前処理後各種濃度のConAを加えると、その泳動度の増加がより薄いConAで起こり、その増加率が著しく高まることを示すものです。
この所見についての解釈は必ずしも容易ではないが、最近発表されたSinger
& Nicolson等の膜の流動性説から理解すると、どうやらConAの反応も抗体の反応も、その反応の始まりにおける膜の変化が共通であり、相互に干渉しあうと考えられます。なほいくつかの免疫反応を加えてまとめてみたいと考えています。昨年、報告したinsulin、glucagon、cAMP等の反応にも類似な現象があり、これらの現象を一元的に解釈出来ないかと考えています。今後の発展が期待できる様に思っています。
《梅田報告》
組織培養を行っていると出るデータはすべて動物実験のデータと平行するので、微量でしかも手早く行える培養法が有益であると強調したくなる。勿論平行しなくてもそれ相応の理由があり、却ってその理由を見出すことが作用機作を解明する手助けになることもあるようで、それ程神経質にならなくても良さそうであるが。この平行しなかった例を御報告します。
(1)AflatoxinB1は、Aspergillus flavus等により産生される有名な発癌性カビ毒ですが、より毒性が低いが、構造上非常に良く似ている発癌性カビ毒にSterigmatocystinがあります。これは、Asp.nidulans、Asp.versicolor、Bipolaris
sp.より産生されると云われていますが、この中でAsp.versicolorは米等に産生しているので、日本では食品衛生学的にAflatoxinB1よりも重要視されています。
急性毒性はAflatoxinB1はrat経口でLD50 7.2mg/ml(♂)、SterigmatocystinはP.O.LD50
166mg/kg(♂)です。
(2)(図を呈示)この物質をHeLa細胞に投与すると、図の如く殆同じような毒性を示します。2つ共非常に強い染色体の変化を示します。gap、break、translocation数を調べると表の如くで1つでも異常染色体を持ったmetaphase像の%をみると次表の如くになります。(表を呈示)ややSterigmatocystinの方が強く障害を与えている感じを与えます。
(3)肝(ラット)の初代培養に投与して増生してくる細胞の障害像をみると、この場合はAflatoxinB1の方が障害されているようです。
以上、非常に興味があるのですが、この差の理由は今後の研究課題と考えています。
《野瀬報告》
細胞融合法によるALP-活性調節の解析
前にCHO-K1細胞から、ALP-I活性の高い亜株を分離したことを報告した。活性を持たない細胞が活性を持つようになる機構として、(1)“nonsense"structural
geneがmutationによって“sense"となる。(2)repressor
geneの失活。(3)operator geneの変異によりrepressor-resistantとなる。(4)positive
vegulatorの活性化、の4つが一応考えられる。これらの可能性をある程度checkする手技としてcell
fusionによる解析が有効と思われた。
実験に用いた株は、高ALP-活性株としてAL-431-10G、無活性株としてFM3A
AGr5であり、前者はPro要求性、8AG-感受性で、後者はPro非要求、8AG-耐性である。それぞれの細胞を、500万個ずつとって混ぜ、1mlのpH
8.0のMEM(UV-不活化Sendai Virus 1000HAU/ml含有)にsuspendする。これを0℃・15min.、37 ℃・30min.処理してからシャーレにまき、一日後に選択培地に換えた。選択培地としては、MEM+可欠アミノ酸-Proline+5%dyalyzedFCS+HAT(hypoxanthine+aminopterine+thymidine)を用いた。約2週間後に、生き残っている細胞をcolonial
cloneとして3個分離し以下の実験を行なった。
CHO-K1由来のAL-431-10Gの染色体は、Mode numberが20で、そのうちMetacentricが8、Sub-centricは10であり、FM3A
AGr5はmodeが42でMeta 5、Submeta 0である。ここで得られた、hybrid
cellsの平均染色体数は表に示した(表を呈示)。
これらのhybrid cellはscolonial cloneのためか、染色体数のばらつきが非常に大きい。しかし、平均として大体の傾向を見ると、hybridの89-C1はChinese
hamster 2+Mouse 3のfusionからいくつか染色体がdeleteしたもの。89-C2は1+2、23-C1は1+2から数本deleteしたものと考えられる。
ALP-I活性を見ると、23-C1はFM3Aと同じくほとんど検出できず、89-C1、89-C2は有意な活性が検出された。比活性が低いのは染色体数が多く、合成タンパク量/細胞が多いためALP-I活性が稀釋されているのであろう。23-C1で活性がないのは、AL-431-10Gの染色体(恐らくALP-1のStructural
jeneを持つ)が、何本かdeleteしたためと考えられる。これらの結果から、初めの可能性のうち、少なくとも(2)は否定出来ると考えられる。
《黒木報告》
§AF-2及びニトロフラゾンの10T1/2への毒性§
AF-2などニトロフラン系化合物のtransformabilityをテストするための第一段階として10T1/2を用いて毒性をテストした。
細胞:10T1/2 P12、200/160mm dish。
物質:DMSOに溶解後、DMSO final 0.5%に加えた。2日後med.change、以後10日間培養。
(図を呈示)図にみるように、AF-2はnitrofurazoneよりも、毒性である。
2週間後のコロニーの形態からtransformationは判定できなかった。
《乾報告》
生物体自身に投与した場合に、生物体に強い毒性および発癌性を有するが、これを試験管内で直接細胞に投与すると細胞になんら影響を与えない物質が存在する。これらの物質はおそらく体内で代謝されての代謝産物が活性化癌原性物質として作用し、培養細胞ではこの代謝系が欠除している故、毒性、発癌性が示されないと考えられる。
一つは環境変異原、Carcinogenを適確に且つ迅速にスクリーニングする目的と突然変異と細胞癌化の関係を解析する目的で、種々の化学物質を動物体内で代謝させ、これを直接細胞に作用させる一連の仕事の一つとして、DiPaulo等のIn
vito-In vitroの実験の追試を強い癌原性がin
vivo、in vitro、transplacentaで知られている4NQOを使用しておこなった。
Esterial Cycleの中期の雌ハムスターに一夜だけ雄をmateし、翌朝Spermを確認したものについて、(図を呈示)図の如くmate後11日目に、あらかじめDMSOに10mg/mlに溶解した4NQOを20mg/kgの割合で腹腔内注射した。注射後、48時間目に胎児をとり出し、胎児一匹毎に、0.25%トリプシンで消化後、Dulbecco's
MEM+20%仔牛血清培地、5%炭酸ガス存在下で培養を開始した。(通常胎児5匹、内2匹は培養24時間で染色体標本を作製した。また培養当初から5T5系式の細胞を樹立するつもりで10万個/TD-15播種し、5日目毎にSubcultureを行ったが、Culture
2代目で培養に失敗した)。培養開始後5日目に一部細胞を1万個/シャーレの割合でシャーレ10枚播種し、他の1部を継代培養し(5万個cell/ml)、残りを形態観察用にフラスキットにまき順に固定した。シャーレは、培養を続け顕微鏡下でColony形成が明らかに認められた。播種後9日目に固定染色した。フラスキットによる形態観察で、初代培養細胞に4NQOを直接投与したと同様な細胞毒性が表れたが、著明ではない。
(表を呈示)シャーレに播種した細胞のP.E.およびTransformed
rateは表の如くで、培養開始後14日で変異コロニーが発現した。2代目に出現したコロニーは3・4・・・と、同程度に出現した。他の化学物質、対照のDMSO注射群の結果、染色体切断の結果、変異コロニーの写真は次回御報告する。
《堀川報告》
当教室で確立したコルセミド−採集法を用いることにより、HeLaS3細胞から得た同調細胞集団の細胞周期を通じてのX線に対する感受性の違い、ならびにX線照射による誘発突然変異率の違いを調べた結果について報告する。
(図を呈示)図1に示すように細胞周期の各期の細胞に400Rづつ照射した際のコロニー形成能でみた感受性曲線は、これまで報告してきたようにM期とlate
G1〜early S期の細胞が最も高感受性であるという、いわゆる2相性の曲線が得られている。
一方、同調培養された各期の細胞に400RつづのX線を照射し、その後72時間のfixation
and expression timeをおいたのち、10万個づつの細胞を、15μg/ml
8-azaguanineを含くむ培養液10mlづつを加えた90mmシャーレに入れて約2週間培養し、シャーレ当りに出現するコロニー数を基にして、10万個生存細胞当りの8-azaguanine抵抗性細胞の出現率を調べた結果を同じく図1に示した。
これらの図からわかるように8-azaguanine抵抗性細胞は、late
G1〜early S期の細胞をX線照射した時に最も高率に誘発されるようである。勿論、ふらつきが相当大きいので最終的な結論を導びき出すには今後の実験にまたなければならない。ともあれ、こうした結果はγ線照射によりチャイニーズハムスター細胞に誘発される8-azaguanine抵抗性細胞はG2期の細胞を照射した時に、最も高率にinduceされるというArlett
and Potter(1971)の実験結果と大きく相反しているが、一方、マウスC3H/10T1/2
CL18細胞を、N-methyl-N-nitro-N-nitrosoguanidineで処理した際、G1-S
boundaryの細胞が最もmalignant transformation
frequency(コロニーのmorphological classificationで判定している)が、高そうだとするBertram
and Heidelberger(1974)の結果とある程度類似している。
しかし、本実験で得たlate G1〜early S期の細胞が何故X線照射による誘発突然変異率が高いのか、そして、これはMNNGとかX線特有の現象なのかといった疑問が生じてくるが、こういった問題に対するはっきりした回答は、今後UV照射とか4-NQO
or 4-HAQO処理による細胞周期を通じてのinduced
mutation frequencyが明らかになるまで待たなければならない。