【勝田班月報・7510】
《勝田報告》
 §各種培地の比較検討(1.特に各種細胞についての比較):
 A.各種培地での各種細胞の比較
 表の数値は、培地を交新しないで7日間培養した場合の増殖率を、各継代培地内増殖率を100としての比である。DM-150はDM-153の塩類蘇生がDで、他は同じ合成培地。
株名 MEM F12 DM-120 DM-150
3T3 10%FCS+ 100* 85.1 100
CHO-K1 10%FCS+ 82.7 100* 98.6
L - 97.7 96.8 100* 97.9
JTC-25 - 100 88.9 100* 95.4
B.培地はDM-150で、各種塩類濃度の比較
6000mg/l 6800mg/l 7600mg/l 8000mg/l
3T3    10%FCS+ 100.9 100* 94.0 96.5
CHO-K1 10%FCS+ 83.5 86.1 100* 97.1
ラット肝2代 10%FCS+ 75.8 92.1 107.7 100*
L・P3   - 108.8 114.0 104.5 100*
JTC-25・P3 - 101.9 107.9 118.2 100*
 A表では対照以上のものが無かったが、B表の実験では、特に合成培地継代細胞において現れた。なお上のNaCl濃度は次のカッコ内の培地に相当している。6000mg/l(RPMI-1640)、6800mg/l(MEM、DM-153)、7600mg/l(F12)、8000mg/l(DM-150)。いずれも、低張気味の方が増殖が良いというのは面白い知見であった。

《高木報告》
 10月1日、長崎市公会堂で日本消化器病学会と同時に第6回日本膵臓病研究会が行なわれ、“膵ラ氏島細胞の培養"の講演を依頼されました。臨床家ばかりの学会ですが、臨床研究におけるTCの応用について少しでも裨益するところがあればと考え、主としてtoechicalな問題を紹介した次第です。
 膵ラ氏島細胞の培養について
 ヒトあるいはラット膵ラ氏島細胞を培養してこれに発癌剤を作用させる場合、作用後細胞が分裂しなければ実験が成功する可能性はまず考えられない。そこで、ここしばらくラ氏島細胞、特にB細胞の分裂に関する仕事を進めてみたいと思う。
 ラ氏島細胞の分裂促進物質に関する研究がはじまったのは、比較的最近のことである。Chickは、生後1〜3日のラット膵のmonolayer cultureについてoutoradiographyを行ない、glucose 3mg/dlおよびtolbutamide 100μg/mlでは対照のglucose 1mg/dlに比し、H3-TdRの取込みは3〜4倍に増加し、growth hormone、glucagonは効果を示さず、dexamethasoneは逆に抑制することを報告している。またAndersonらは成熟マウスの単離ラ氏島の培養についてautoradiographyを行ない、glucose 3mg/mlの場合にのみH3-TdRの取込みの増加を認めている。私どももラ氏島のorgan cultureでglucose 3mg/mlの時にB細胞の分裂像を確認している。また藤田らは、in vivoでceruleinもB細胞の分裂を促することを示している。一般にhormoneの分泌促進物質は、そのhormoneを分泌する細胞の文れるを促進するとされているが、ラ氏島B細胞についてもそれらの物質につき培養系で検討を加えてみたい。
 また発癌物質としてDMAE-4HAQOの外、Streptozotocinは単独では催糖尿病作用があるが、Nicotinamideとともに用いると腺腫の発生することが判っており、これをin vitroで用いてその作用機序を解析してみたいと考えている。

《梅田報告》
 (1)月報7410、7502にマウスまたはハムスター胎児細胞の、継代数代目の培養細胞を用いての発癌実験についてのべた。この時悪性転換増殖巣の出現頻度が少ないことと、コントロールのシャーレに(6週間も培養を続けるので)、Giemsa染色で赤染する細胞間分泌物質のものならなるnetworkがあり、判定が困難なことのあることを報告した。この点を改良するため、また単一細胞集団を得て実験した方が宜敷かろうとの考えから、マウス或はハムスター胎児肺の培養細胞について実験を行ったが、密な赤染するnetworkはさらに強調されることを報告した(月報7502)。
 (2)今回は胎児肺を得た時と同じ目的ですなわち、単一細胞集団を得、しかもadultでも実験出来る可能性も考えて、マウスの腎細胞培養について行っている培養経過について述べる。生後4週雄のDDDマウス腎を剔出後、皮質部と髄質部に分けてからそれぞれについてcollagenase、hyaluronidase(混液)処理を行った。髄質部は細胞のばらばらになり方、収量が悪く、増生も悪かった。皮質部の培養では、上皮様細胞と繊維芽様細胞とが増生してくるが、これを継代して、1万個、5万個、25万個/6cmシャーレに播いて6週間培養した所、比較的上皮様細胞の増生が多くなった。1万個播種したものでは、6週間培養でやっとシャーレ底面を一杯におおう程度の増生であった。5万個、25万個細胞播種したシャーレでは、固定染色標本でうすい染色像を呈した。25万個播種のシャーレで、やや細胞分泌物様のもので密に盛り上ったnetworkが出来ていたが胎児細胞を使った時よりも少なくて見易かった。
 (3)以上のように比較的きれいな染色像が得られたので、この細胞(培養46日目、一度も継代しなかった残りのシャーレより継代した)を継代して、C14-BP代謝能を測定した。試験管に25万個cells/mlの細胞浮遊液の0.25mlを接種し、培養2日目にC14-BPの2n moles/mlを投与し3日間培養して、water solubleになったC14-BPの放射能を測定した。同時に別の試験管に別の培養を用意し、cold BP(2n moles/ml)を投与し、3日後の細胞数を数えた。
 (表を呈示)表に示すように、水層と有機層と両方に回収された放射能は投与放射能の93%で、水層に認められた放射能は46.3%であった。これを100万個あたりの細胞数に換算すると、15,938p moleのBPを代謝したことになる。
 (4)以上の実験から腎培養細胞は上皮様細胞が増生し、しかも1ケ月半近く培養した細胞でもBP代謝能のあることがわかったので、早速発癌実験をスタートした。

《乾報告》
 AF-2投与妊娠ハムスター由来細胞のTransformation及び染色体変異;
 先月の月報で、AF-2投与妊娠ハムスター由来の細胞の8-Az、6-TG耐性突然変異コロニーの出現について報告した。本号では同細胞のTransformation及び染色体変異誘導について報告する。
 (表を呈示)表1に示した如く、変異コロニーは、Subculture1、3、5代目に出現した。1代目では、対照のDMSO、Hnks投与群においても、1.17〜1.58%とやや変異コロニーは高率に出現するが、3、5日には急速に減少する。これに反しAF-2投与群では変異コロニーは、培養5代目迄一定の出現率を示し、その頻度は投与量依存性を示した。染色体変異は、表2、図1の如くAF-2 20mg/kgで著明に誘導され、その出現率は明らかに投与量依存性を示した。対照に使用したAF-2直接投与群では図1の如く、投与後48時間で著明な減少を示した。

《難波報告》
 21:各種化学発癌剤のヒト正常細胞に及ぼす細胞障害性
 細胞毒性を示す化学物質が必ずしも発癌性を有するとは限らないが、しかしヒトの細胞に対する発癌性がありそうかどうか簡単に、しかも迅速に決定する一方法として細胞の増殖に及ぼす化学発癌物質の影響をみることは有意であろう。
 (表を呈示)表に示したように、現在までに検討された化学発癌剤で4NQOが最もヒトの細胞増殖を阻害する。ヒトの細胞は10-5乗M BP 4日間処理でも、びくともしないが、培養内でBPによって発癌するC3Hマウス由来の10T1/2細胞は著明な細胞増殖阻害を示している。

《久米川報告》
 セロファンシート法によるラット肝実質細胞の培養
 肝実質細胞は野瀬氏の方法(7507)に従って、adult ratの門脈からCa-Mg-free hanks BSSを潅流、次いで、20mlの0.05% collagenaseを潅流した後、liverを取出し、0.05% collage-nase中で細胞をバラバラにし分離した。
 こうして得た肝実質細胞と思われる細胞はシャーレ培養では、野瀬氏の写真とほぼ同じ像、および経過を示した。
 分離した肝細胞を遠沈(1,000rpm、5min)し、ローズチャンバーでセロファンシート法での培養を試みた(培養液の還流なし)。なお、培養液はDM-153+15%CSによる。セロファン膜の下では、細胞は円形で、辺縁部ののびがなく、ぶ厚い感じである。(写真を呈示)写真は培養5日目の細胞であるが、細胞は数個単位となり、その細胞間にはphase-whiteの間隙が出来る。多分bile canaliculusが形成されたものと思われる。膜の下の細胞は丁度、胎生マウス肝臓を培養したときに見られる肝実質細胞像に非常によく似ており、セロファンシート法で培養した株化したラット由来肝細胞像(RLC、JTC-25・P3、IAR)とは、大分異なっているように思われる。

《堀川報告》
 現在、われわれはChinese hamster hai細胞から分離した栄養要求性変異あるいは8-aza-guanine抵抗性または感受性細胞を用いて4系の突然変異系を確立し、それらのうちで突然変異検出能の最も鋭敏なPrototrophic cellsを用いた前進突然変異系を使って種々の詳細な解析を進めているが、これらとは別に更にまったく違った突然変異検出系を確立すべく準備を進めているので今回はそれらについて報告する。
 現在組み立てようとしている突然変異系は、Xeroderma pigmentosumの患者から得た細胞を用いる系で、この系ではUV高感受性型から正常感受性へのreverse mutationを追うものである。幸い突然変異実験に使用可能な、SV40でtransformされたXP20S細胞というのを阪大武部氏より入手することが出来た。この細胞は元来7才の幼女から得た細胞で、UV照射後のunscheduled DNA合成能をtestした結果からはGroup Aに属するUV高感受性細胞である。種々の基礎実験の結果、培地としては75%Eagle MEM+10%TC-199+15%calf serumを用いるのが最適で、この培地ならガラス、シャーレ中でも10〜15%のPlating efficiencyを示す。又、この培地中での細胞のdoubling timeは約36時間である。残念ながらSV40でtransformさせているだけに、Chromosome numberのdistributionは大きいようである。ともあれ、このXP細胞を用いた突然変異検出系は、変異のマーカーとしてendonuclease活性を指標と出来るだけに、従来われわれが確立した各種突然変異検出系と対比して、今後種々の検討が出来るものと思われる。

《野瀬報告》
 上皮様細胞のGrowth Regulation (1)
培養細胞の増殖に関しては、主にfibroblastsを用いて研究が進行している。肝細胞を培養して得られたepithelial cellsで変異や酵素誘導を研究する上に、上皮様細胞の増殖についての基礎的知識が必要と考えられる。またfibroblastsとepithelial cellsとの間に、細胞増殖の調節機構が異なっているかもしれないので、各種の上皮様細胞の増殖の様相を調べてみたいと思っている。
 (図を呈示)図はconfluentになった細胞を、fresh medium(5%FCS・MEM)で培地交換してから、各時間に、H3-TdR、H3-Urdで1hrのpulseを行ない、cold TCA pptへのとりこみを見た結果である。H3-Urdのとりこみは培地交換直後に上昇し、H3-TdRへのとりこみは12〜20hr後にピークとなった。細胞株によって培地交換後のH3-TdR取込みには差が見られた。12〜20hrで見られたH3-TdRのピークは、G1期の細胞がS期に入ったためと考えられるが、0hrにH3-Urd又はH3-TdRのとりこみが上昇するのは興味ある。恐らく膜の透過性の変化と考、、現在、検討中である。

《山田報告》
 正常肝由来細胞を長期に培養すると容易に変異し、悪性化することは従来よく知られた事実ですが、経時的に染色体がどの様に変化するかを幾つかの細胞系を用いて検索しました。その結果を図にまとめて記載しますが、その主な結果は、
 1)染色体モードは経時的に変化し、約2〜3年の間に42本から最高57にまで変化した。
 2)polyploidyの染色体も出現するが、経時的に増加して行く傾向はない。
 3)核型の変化のうち主要な変化は、大型のmetacentricの染色体が出現し(その或る系ではNo.1の染色体に由来すると思われる)、また小型のtelocentricの染色体が増加する例が多かった(RLC-15、-16、-18、-19、-20、-21の染色体数分布と核型分析の図を呈示)。

《佐藤報告》
 この報告は人癌の組織培養の班研究として行われているものである。材料は定型的な1才男子のHepatoblastomeである。手術材料で、血清中にαFを生産していた。0.1%trypsinで細胞分散して培養され、現在RPMI-1640にBSを20%、Lact.hydro.0.4%混じた培地で生育している。初代培養及び培養日数の短い時期には染色体分析で46本と48本が見られ、又形態学的にもFibroblast like cellとEpithelial cellが認められた。
Paper濾紙法でコロニー分離に成功し、現在3つのコロニアルクローン、Clone 1、Clone 5、Clone 6がある。形態学的には三つのクローンに大きな差異は認められないが、αFの生産量、Albuminの産生量に差異があって、Clone 1はAFP(+)、他の2系は(++)。Albuminの産生はClone 5のみ。染色体のモードはいずれも50〜68%の頻度で48本である。PASはいずれも++陽性である。
 Double immuno duffusion in agar gelで90倍濃度培地程度で他の原発肝癌のαF及び当患者血清のαFと反応するが、免疫電気泳動ではやや速度が異って見られる。Radioimuno-assayでも同様に測定可能であるが未だcell当りの量は決定していない。
 これらの細胞はATS処理の新生児又は若いハムスターに移植可能である。組織像は、患者材料に比しやや腺癌状の構造を示すのが特徴であった。又Rotation cultureでも同様の構造が認められた。現在Clone 5よりの再クローン、ヌードマウス移植等を準備中である。

編集後記


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