【勝田班月報・7511】
《勝田報告》
§各種培地の比較検討(とくに塩類組成):
(図表を呈示)今月は、表に示すように、各種の塩類組成を比較してみた。アミノ酸、ビタミンはすべてDM-153と同じで、塩類だけを変えてある。D、Hanks、Gey、Hanks-Hepesの処方である。
第1図は、無蛋白無脂質合成培地内継代株JTC-25・P3(ラッテ肝なぎさ変異株)を用いた実験で、1日間継代培地DM-153で培養した後、各種実験培地にきり換えた。結果は、処方によりかんりの差のあることが示され、塩類といって軽視できないことが判った。
第2図は血清含有培地内継代株(ラッテ肝)RLC-10(2)を用いた実験で、継代培地で2日間培養した後に実験培地に切換えている。この場合にも、やはりかなりの差があらわれた。Geyの処方が最も増殖が低かったが、合成培地のJTC-25・P3では(図は省略)、実験培地に移して2日間はごくわずかに増殖が認められたが、以後は急速に細胞数が減少し、細胞がこわされてしまった。
無細胞で培地だけを37℃2日間加温してpHの変化をしらべると、DM-153(0日:7.30→2日后:7.51)、DM-159(7.51→7.71)、DM-161(7.23→7.50)、DM-162(7.05→7.34)、DM-163(7.1→7.1)であった。
《乾報告》
ヒト神経芽細胞肉腫(GOTO)由来細胞の染色体;
10月初め癌学会からもどって以来、人工タバコの検定、検定、検定で、培養器をすべて占領され、基礎研究が出来ず毎日研究所へ行くのがいやになってしまいます。10月一ケ月で、10数倦怠とはまったくもって何をか云わんやです。スクリーニングセンターのスクリーナーは、検定の合間に研究をする運命にあるのでしょう。
今月は、医科研の関口先生が樹立された神経芽細胞腫の染色体について報告致します。
(核型と染色体数頻度分布の図を呈示)染色体数は図の如く44本で、特定の標識染色体は存在せず、No.1染色体のモノソミー、No.2染色体のトリソミー、C群の染色体、G群の染色体の一本欠除で代表されます。
染色体数分布は図2の如く染色体数44にモードがあり、モードの細胞の出現頻度は26.2%で、大部分の染色体が近2倍域に存在した。染色体数80以上の4倍体の細胞の出現率は、16.1%で、染色体数84の細胞の出現があったが、染色体数88の2倍性の細胞はみられなかった。
なお起原が、1年1ケ月の男児副腎であるので、Y-body、Sex
Chromatin、Rate replicat-ing X Chromosomeの出現をみた所、Y
body>90%、Sex Chromatin<15%、Rate replicatingX(-)で、性染色体異常の存在はないことがはっきりした。
《難波報告》
22:BPに対するヒトのリンパ球の感受性の差違の検討
環境中に存在する発癌性炭化水素の発癌性に対して、ヒトには個体差があると考えられており、その個体差は各自の持つAHH活性の違いによるのではないかと予想されている。実際に動物実験レベルではAHHの高い動物ほど、発癌性炭化水素に対する発癌率が高いことが知られている。
個々のヒトの発癌性炭化水素の発癌性の差違を検討することは非常に困難であるので、BPに対する感受性の個体差を、ヒトの末梢血リンパ球を使用して、1)細胞の増殖阻害度、2)DNA合成阻害度、3)クロモゾームの変化、で検討した。
1)細胞の増殖阻害度
末梢血リンパ球をRPMI1640+20%FCS+PHA培地中にまき込み、24hr後、コントロール群に、0.1%エタノール、実験群に10-6M乗BPを添加、更に2日培養して生存するリンパ球数を算えた。結果は表に記した(表を呈示)。まだ実験例数が少いが、細胞の増殖阻害度を細胞数を数える方法では、BPに対する感受性の差違を見い出し難い。
2)DNA合成阻害度の検討
1)の場合と同じように細胞をまき込み、BPで処理。72hr後、1μCi/ml
H3-TdR 1hr投与して、DNA中にとり込まれたH3-TdRを調べた(表を呈示)。
BPに感受性の高いと考えられるヒトからのリンパ球をBPで処理すると、著明なDNA合成阻害がおこっている。1)の方法でははっきりしなかったBPに対するヒトの個体差が、2)の方法では、比較的よく見い出されているようである。
3)クロモゾームの変化
Exptle.No.3由来のリンパ球を、RPMI1640+20%FCS+PHAで培養し、2日後10-6乗M
BP 1 hr処理、3日後にクロモゾーム標本作製。10.9%の細胞が異常な核型を示した。その他のものは目下検索中である。月報7509に報告したごとく10%以上の細胞に染色体の異常が見い出されるようなら、その個体はBPに対して感受性が高いと云ってよいにではなかるまいか。
発癌性炭化水素に対して感受性の高いヒトと低いヒトに由来する細胞を培養し、発癌性炭化水素で発癌実験を行ないたいと考え、目下その方法を考慮中である。
《梅田報告》
(1)FM3A細胞の8AG耐性獲得の系を使っての、突然変異誘起実験のその後の結果について報告する。方法は度々述べてきたようにFM3A細胞をMNNGの各濃度で2日間処理し、8AG
20μg/mlを入れたものと入れないagarose plate上に細胞を播種し、12日間培養後に生じてきたコロニー数を算えて突然変異率を計算した。Doseを変えて2回実験を行ったが、MNNGによりこの系でも突然変異の誘起されることがわかる(表を呈示)。
(2)これも以前から報告してきた方法で、DNA単鎖切断に及ぼす影響を調べた。FM3A細胞をC14-TdRでprelabelしてからMNNG或いはHN2処理を行い、24時間後にAlkaline
sucrose gradient上に処理細胞をのせ、37℃1時間
lysisさせた後、遠心した。
MNNG 10-5乗、10-5.5乗Mで切断が起っている。HN2では、10-5乗Mで切断が起っているようなパターンを示しているが、10-4乗M、10-6乗M処理では、fract.No.5本目と、2〜3本目に異常な大きなDNAのピークを示している。HN2がbifunctionalの故と思われる。
《野瀬報告》
潅流法で分離したラッテ肝細胞の形態
Collagenase(0.05%)又はDispase(1000u/ml)でラッテ肝を潅流し、分散された細胞を長期間培養し、形態、増殖、生化学的性質について検討している。細胞の分散法は月報No.7507と同じで、低速遠心(50xg、5min)の沈澱部分と上清部分のそれぞれから細胞をとって炭酸ガスフランキ中で培養した。初代培養の3〜4日目の細胞形態は月報7507に示したが、更に培養を続けると次第にこの細胞は消滅し、別の形態をもった細胞が増殖してくる。図1〜4はDispaseでとった細胞で、それぞれ9日後、9日後(デキサメサゾン添加)、20日後、20日後(デキサメサゾン添加)であり、図5〜8はCollagenaseで分離し同様の培養条件下の細胞である。これらはすべて低速遠心の沈澱部分からの細胞で、上清からは上皮様細胞は全く出てこなかった。従って上皮様細胞は大型細胞(恐らく実質細胞)から由来しているのではないかと考えている。Dispaseを用いた場合、石畳状の上皮様細胞が容易にとれるが、Collagenaseではホルモンを加えないと、培養3週間目頃にはホーキ星状細胞が主になってしまう。デキサメサゾンを加えて培養を続けると、増殖はやや低下し、形態も多少変化する。特にColla-genase法の細胞で、添加群と非添加群との間の差が大きい。図7の細胞にホルモンを加えても図8のようにはならないので、この差は培養内のSelectionの結果であろう。
《佐藤報告》
◇3'Me-DAB発癌実験
3'Me-DABによる細胞の癌化実験を開始した。第一弾はJ-5-2cl(2倍体性細胞)用いる実験系である。
(1)3'Me-DABの細胞毒性(コロニー形成率より。)
J-5-2cl、300cells/plastic dish(60mm)植え込み、24時間後、各種濃度の3'Me-DABを含む培地で置き換え、9日間培養(その間一回3'Me-DABを含む培地で培地交新)。コロニー形成率を求めた(表を呈示)。3'Me-DABは、J-5-2clのPlatingに対する阻害は比較的少ない様であるが、コロニーの大きさについて見ると抑制が著るしい。このことから、3'Me-DABは分裂阻害的に働くものと思われる。
(2)3'Me-DABの処理
3'Me-DABの長期間投与を試みた(つつある)。3'Me-DABの濃度は毒性試験の内の、4.8μg/ml程度を使用した。途中経過であるが、3'Me-DABを約20日投与した時点での、DAB未処理のコントロールの細胞との比較では、コロニー形成率、DAB消費能、染色体核型分析のいずれについても、ほとんど差が現われていない。更に3'Me-DABを40日、60日投与した時点での分析を進めている。
《高木報告》
培養膵ラ氏島細胞の分裂促進因子
前報の計画にのっとり実験をスタートした。方法として、成熟ラット膵を膵管よりHanks液を注入後摘出し、これをハサミで細切する。次いでCollagenase
30mg/8mlで、magnetic stirrerにより約10分間処理し強くpipetingした後単離したラ氏島を実体顕微鏡下にwire
loopで拾い上げる。集めたラ氏島をDispase 1000u/ml
3〜4mlで15分ずつ3〜4回magnetic stirrerで処理して細胞を分散し、2万個/wellとして0.15mlの培地とともにmicroplateに植込む。数時間後より細胞は次第に集塊を形成しはじめ、1週間後には完全な集塊となる。細胞の培養開始直後と、1週間を経た集塊形成後に培地のブドウ糖濃度を100mg/dlより300mg/dlにあげ、同時にH3-thymidine
1μCi/mlを加えて1週間continuous labelingを行う。終って細胞集塊を遠沈してcell
pelletをつくり、それをそのままでBouin固定して包埋し、切片を作成して型の如くdipping法によりautoradiographyを行う。この方法ではB細胞が、aldehyde-fuohsin染色されるか否かが問題で、分裂細胞がB細胞であることを証明するためには電顕切片も同時に作成することが必要かも知れない。
成熟ラット膵では分裂を示す細胞が可成り少いことが予想されるので、幼若ラット膵のcell
sheetについても検討したい。すなわち、この場合細胞は植込み後3週間はcell
sheetが形成されるのでこの時期の細胞についても諸因子の影響をみたい。(写真を呈示)写真は成熟ラット膵ラ氏島の“organ
culture"でブドウ糖300mg/dlの時みられたB細胞の分裂像を示すものである。
《山田報告》
最近(日本癌学会当日)培養保温器が故障し、保存している細胞株、及び実験中の細胞が全部死滅してしまい、がっかりして居ます。しかし再び改めて細胞を培養しなおし、実験を計画して居ます。この事故の直前に測定した成績を書きます。
Indian muntjac株の電気泳動度
インド吠え鹿indian muntjacの培養繊維芽細胞の電気泳動度の増殖に伴う変化をしらべたのが、図です。この成績をみますと、Ind.muntjac細胞の表面荷電密度は、これまでしらべたラット、マウスの繊維芽細胞のそれと大差がない様です。今後この成績を基にして、染色体の変化とその表面荷電密度の関係を検索したいと考えて居ます。