【勝田班月報・7605】
《勝田報告》
細胞内ポリアミン量の定量
定量法:(三菱生命研)大島博士法による。ResinはCK-10S。泳動緩衝液は、0.4M醋酸緩衝液。ニンヒドリン発色定量。
細胞:Stationary cultureしたものを0.4M
PCAを加えSonication、上清。
結果:正常肝由来の4系より、腹水肝癌由来の5系(JTC)の方がポリアミン量が多い。系によってSpd.とSp.の対比が夫々異なる。培地中に添加されたスペルミンに対する抵抗性は、JTC-16>JTC-27>JTC-1>JTC-15、JTC-2であり細胞内スペルミン量と略平行することになる。
問題点:この定量法は感度があまり良くないので、細胞数10の8乗を必要とする。もう少し感度の良い微量定量法を開発中。CulbTCが他の正常肝とほぼ同程度の量であるが、もう少し感度を上げれば差が出るかどうか。(図を呈示)
《高木報告》
膵ラ氏島細胞の分裂促進物質について
乳剤の入手が予定よりおくれ、未だ電顕切片のradioautographyによるDNA合成細胞の同定はできていない。細胞集塊(“Pseudoislet")につき、その構成細胞をさらに観察したところでは、集塊中にB、A、D細胞が含まれることは確かであるが、顆粒の認められない細胞についてはこれを同定することは困難で、その外の細胞が含まれていないと断言はできない。また月報7603において調べた物質を再度in
vitroで作用させて、その際のH3-thymidine取込み細胞数を、物質を作用させないcontrolの取込み細胞数と比較して検討したが、Secr-etinをのぞき再現性があった。Secretinは今回のdataではcontrolの有意差なく、さらに再検討の予定である。In
vivoとことなり、高濃度glucose、Tolbutamideなどのinsulin分泌促進物質はin
vitroでは分裂を促進しないようである。
またヒト胎児膵の培養で、3x Eagle's mediumが適していることを前報でのべたが、培養35日でも培地中にinsulinが認められ、40日までは形態的に良好に保たれた。しかしそれを過ぎると細胞は次第に脱落しはじめる。更に工夫が必要である(培養21日の写真を呈示)。
《難波報告》
29:ヒトおよびマウス細胞の4NQO処理に対する反応の差違の検討−RNA合成−
ヒトの細胞が動物の細胞に比べて4NQOで癌化し難い理由を見い出すために、今回はRNA合成を検討した。(DNA合成に関しては月報7602、4NQOのとり込みについては月報7603に記した)
使用したヒト細胞は32代のもの、マウスの細胞はC3H由来11代のものである。
実験結果:(図を呈示)図1〜4に示したように細胞の増殖はヒト、マウス細胞共に3.3x10-6乗M
4NQO 1hr処理で同程度に阻害される。しかし4NQO処理後にシャーレに附着して残る細胞の経時的RNA合成は阻害されていない。
《乾報告》
先々月の月報で、純系アルビノハムスターに、3・4ベンツピレン(Bp)を経胎盤的に投与し、胎児各臓器由来細胞のTransforming
RateはIn vivo transplacental carcinogenesisの標的臓器である肺で著明に高いことを報告した。
(表を呈示)表1でみる如く、通常の方法で10μg/mlの8-アザグアニンで、Selectionを行うと、Total
body由来細胞の耐性コロニー出現率は高いが、次いでLung由来細胞で高く、肝由来細胞ではこの1回の実験では、耐性コロニーは出現しなかった。但し肝由来細胞は、細胞数が少なく、充分の細胞数を得るために7日間の培養を行なったので、このDataを直接の比較に用いてよいか一抹の不安が残っている。しかし現在Dataの集計中であるが、DMN
200mg/kg投与ハムスターより得た胎児肝由来細胞では、同様のSelectionで37ケの耐性コロニーが出現した。Target
Organの細胞のMutation Rateが高く又Transforming
Rateも高い所から、細胞癌化のfirst stepで突然変異が何らかの形で関与していることが証明出来そうなので純系を使用し、標的臓器、Mutation、Transformation、細胞癌化の問題を追及したい。 DMN
200mg/kg(LD50量)投与ハムスター胎児の臓器別Transforming
Rateを表2に示した。表より明らかな如く、DMN投与では、Liver
Cellで耐性コロニーの出現が高く、TransformingRateも高く現われたが、周辺のPiling
up、Criss-Crossを指標としているので、残念ながら、肝実質(或は上皮)細胞のTransformationと云えない。
現在、Liver cell由来、Total body由来のコロニーをクローニングして、増殖中である。後者は、形態的に長期培養内癌化実験のTransform
fociと同様であり、同細胞を1,000万個/Hamsterで移植し10日目の本日、アルビノハムスターチークパウチに米粒大で存在している。これがパウチ内で増殖をつづけ、腫瘤を形成すれば、勝田先生からの宿題のほんの一部をやったことになる。あと2、3週がたのしみです。
《久米川報告》
ヒト胎児肝臓の培養
ヒト胎児の肝臓の器官培養を行った。培養材料は9週と6ケ月胎児の肝臓を用いた。mil-lipore膜をはさんだ器官培養用チャンバーに4個の組織(1〜2mm程度の大きさ)を植込んだ。ローラーチューブ(直径35mm)に2チャンバーつづ入れ、5mlの培養液を加え、シリコーン栓をした後炭酸ガス(5%)+air(95%)の気相中で回転培養(3回/1時間)した。培養液は10%の割合でcalf
serumを加えたDM-153を用い、2日毎に液の交換を行った。現在培養1.5ケ月である。5日毎に培養組織片をmillipore膜とともに電顕用に固定、エポン厚切り切片をトルイジンブルー染色を行い、光学顕微鏡で観察するとともに、超薄切片を電顕で観察した。
9週令の胎児肝臓は、培養10日目までは10数層の厚さ(細胞)で、肝細胞は(H)数個単位の構造を示している。肝細胞間にはsinusoid(S)も見られる(写真を呈示)。
現在組織学的に25日まで観察しているが、培養10日以後は次第に組織片の厚さは減少するが、肝細胞は集団を造って残存している。haemato
poetic cellsは培養5日目位までに、変性消失してしまうようである。
電顕像では、肝細胞間にはbile canaliculus(B)が見られ、細胞内には粗面小胞体、micro-body等の肝細胞の形態的特性が観察される。培養15日のものでは、更にglycogen
granuleも見られた。
6ケ月ヒト胎児肝臓は9週令のものにくらべ、組織の中央部に変性像が見られた。しかし組織の周辺部の細胞は9週令も肝臓と同様、肝細胞の特性を維持している。
回転が速いと培養組織片の表層細胞は傷害を受けているため、通常の回転培養(5〜12回/hour)よりさらに回転を遅く、1時間に3回転で培養している。ほとんど表層細胞に傷害はみられないようである。
《山田報告》
前報でその結果の一部を報告しましたが、其の後引続き行った実験成績と一緒にまとめて報告します。培養肝細胞(RLC-16、RLC-20)の二系を用いて、その電顕所見上みられた細胞質内グリコーゲン顆粒と思われる顆粒が果してその推定通りであるか否かを検討するために行ったのですが、意外な結果がでました。
いづれも培養4日目に約250万個per tubeの細胞に対し、1.3〜13.0mg/ml濃度のグルカゴンを添加し、24時間の間に起る顆粒の変化を観察したのですが、用いた二系の細胞の所見にかなりの差がみられました。
RLC-16は元来グリコーゲン顆粒様物質が少いのですが、前報に記載した様に、グルカゴン投与後glucose消費は減少し、その増殖能はむしろ促進しました。電顕所見は(写真を呈示)図2のシェーマと図3、4の写真に示すごとくグリコーゲン様顆粒の密度は減少し、粗面小胞体が膨化しました。これに対しRLC-20は元来グリコーゲン顆粒と思われる物質は多いのですが、グルカゴンを添加することにより、むしろglucose消費量は増加、その増殖能は著しく減退しました。電顕所見では、グリコーゲン様の顆粒の密度はあまり変化なく、しかしその顆粒の大きさが減少して居ました。また粗面小胞体はRLC-16より更に膨化、不整形化して居ました。
この結果は直ちに理解出来る点もありますが、インシュリンを投与して起る変化を観察した後に、綜合的に今後dicussしてみたいと思って居ます。
《梅田報告》
血清に関するデータを2つ報告する。
(1)今迄報告してきたJAR2ラット肝由来上皮様細胞BB、BC細胞と呑竜ラット肝由来上皮様細胞DL1細胞について、血清を変えた時のα-fetoprotein(AFP)とalbumin(ALB)産生を、北大の塚田先生に測定していただいた。今回からは、ALB測定にもradioimmunoassayを行なったのでかなり低値まで測定出来、またFCSを使った時のAFP産生は非特異的な反応かも知れないとの事です。
F12培地に各血清を10%の割に加え、6週間培養した。週2回培地交換を行なった。(表を呈示)表の中で培地No.としたのは、培地を始めた時から順の培地交新時の意味で、その夫々の順に使い古しの培地を遠心し沈渣を分離し去ったものである。
BB細胞ではALB産生はなかった。BC細胞で低値ながらALB産生が認められたことは意味がある。各細胞により、異なる血清でAFPやALB産生が認められていることに興味がある。
(2)先月の月報で無処理のDM3Aを8AG(20μg/ml)、6TG(5μg/ml)を入れたagarose
plate上の濾紙(GF/A)上でコロニーを形成させた実験を報告した。この時FCSのlotを変えると異なる結果の出ることを示した。今回は異なるFCSのlotでMNNG処理を行ない、それぞれのFCS培地のagarose
plateで濾紙上にコロニーを作らせた。
(表を呈示)表に示すようにMNNG処理2日後の細胞数は血清(A)と(C)では似かよっており、それをcontrol
agarose plate上でコロニーを作らせたsurvivors
per 100 cells(platingefficiencyと同じ)も大差無い結果である。しかし8AG、6TG耐性細胞の出現は表でみる限り(A)血清の方が能率が良い。(B)血清は非常に悪い血清である。
この結果で示したように血清により耐性細胞の出現率が異なってくるとすると突然変異率とはどう解釈したら良いのであろうか。
《榊原報告》
§抗胸腺細胞抗体(ATS)の作用点について:ATS出処理したハムスター頬袋粘膜内に異種培養細胞を移植すると同系動物への戻し移植結果に近い成績が比較的短期間で得られることは既に報告した。今後はATSの作用機序、力価、検定法、適性投与法について詳しく吟味してゆきたい。
殺細胞力価 1:760のATSを生後20週、雌、成熟ハムスター10匹に1回投与量0.5ml、週2回づつ4回連続皮下投与したのち、採血、屠殺して末梢血球数、血液像、血清総蛋白量、血清蛋白電気泳動像、諸臓器の病理形態学的変化等の検索を行なった。対照群10匹には、週2回づつ0.5ml生食の投与を行なった。(表を呈示)表に示す通り、ATS処理群は対照に比して赤血球、白血球、リンパ球数の凡てが有意差を以て減少している。とくにリンパ球数は、対照の1/10以下である。血清総蛋白量は両群ともほぼ同じ値であるが、Albumin、α1-globulinの減少と、α2及びγ-globulinの増加が有意である。平均臓器重量から明らかなように、胸腺を初めとするリンパ性臓器の萎縮は見られない。病理組織学的にも胸腺に異常は見出せなかったがリンパ節は増殖性で、二次濾胞の拡大と髄質の形質細胞増生が顕著であり、脾では白脾髄辺縁の繊維化が目立った。以上の所見は、ATSの作用点が末梢血中のリンパ球、とくにT-cellであることを推定させ、今後更に精製したATSを用いて末梢血リンパ球数の変動を経時的に検べる予定である。又参考までにヌードマウスについても、生理的bockgroundを明らかにしておきたいと考えている。