【勝田班月報・7710】
《勝田報告》
アルギニン(-)培地におけるラッテ肝由来細胞株の長期培養(月報7502のつづき)
(表を呈示)上記のようにラッテ肝由来の上皮細胞はアルギニン(-)培地で3年間は生存、緩慢ではあるが増殖出来る。RLC-16、-18、-19、-20、-21、-22、-24、-27、-28、-29の各系である。fibroblast系は一年以上は生存するがやがて死滅する。
《難波報告》
51:Chinese Hamster Embryosのliverより樹立された繊維芽細胞株と上皮性細胞株との性質
月報7708、7709に、クローニングにより樹立された両細胞株の、1)培養経過、2)両細胞に対する4.2x10-6乗M〜4.2x10-7乗MのDexamethasoneの細胞増殖促進効果、3)Cytotoxicityの比較を記した。今回は両細胞株のその他の細胞学的特徴を記した(表を呈示)。
《高木報告》
細胞の癌化または変異に関連してDNAの修復機構を検討する場合、培地条件で修復の差を作り出すにあたって、種々の問題点があることがこれまでの実験結果より分った。
同一薬剤を用い、培地条件を変えて細胞のsurvivalを検討する実験を繰返し行った場合、dataが一定しないことがあったので、その原因を植込み前の細胞の状態に求めてみた。これまでの実験にはexponential
growthを示す細胞を用いたつもりであったが、V79はgene-ration
timeが9.5時間と増殖が早いため、時にはconfluentに近い状態の細胞も用いていたようである。そこで厳密にexponential
growthを示す細胞を植込み、薬剤を作用させる際と同様6時間おいて3種の培地に交換し、以後10時間にわたり細かく時間を区切ってDNA合成を調べてみた。(図1、2、3を呈示)。図1に示すように、MEMでは植込み直後よりDNA合成は上昇し、またconditioned
mediumでは終始低いlevelの一定したDNA合成がみられたが、ADMでは2〜3時間後にDNA合成が上昇し、以後そのままか、あるいはやや下降して、constantな状態がつづくことが分った。このADMにおける2〜3時間後のDNA合成の上昇は再現性があり、実験誤差とは考えられない。この様なDNA合成の変動が、植込み前の細胞の状態により起るか否かは細胞のrepairひいてはsurvivalに影響を与えることが当然考えられるので、以後は一定してexponential
growthの細胞を実験に用いることにした。
月報7708では4NQOにつき3つの培地条件で検討したが、今回はMNNG、EMSにつき検討してみた。図2の如くMNNGではconditioned
medium>MEM>ADMの順にsurvivalがよく、またEMSについても図3の如くMNNGと同様の結果がえられた。
これを4NQOと比較すると、MEMとADMのsurvivalが逆の結果であった。
その理由として、(1)細胞の蒙るdamageの性質が異り、repairのおこり方が違うということが考えられる。因に細菌ではEMS、MNNGはrec
systemで4NQOはUVと同様hor systemでrepairされることが知られている。(2)薬剤作用後培地を切換えると、ADMでは2〜3時間たってDNA合成が高まるので、この時期に細胞の死滅する可能性も強いと考えられる。従って、4NQOの如くrepairが長時間にわたり続く場合には、細胞のsurvivalが多く、EMS、MNNGのようにrepairが短時間におこるとされる場合に、DNA合成の上昇する時期に死滅する細胞が多く、MEMよりむしろsurvivalが低下することが考えられる。
ヒト細胞にEMSを作用させる実験はなお続行中である。
《梅田報告》
(1)前回の班会議でシリアンハムスターの胎児細胞をクローニングし、上皮性と繊維芽細胞株の2クローンを得、これらに及ぼすMCAの毒性を調べた所、両細胞共に分裂増殖能は極端に落ち、同時にMCAに反応しなくなっていたことを報告した(月報7707)。このクローンについてその後調べた所、primary
cultureを行い増生してきた細胞を凍結保存し、それを解凍して培養に移してから、丁度Cl4では23日から26日、Cl7では21日から24日に発癌剤処理をしていたことがわかった。
(2)上の増殖しなくなった現象を、前回の班会議ではagingと説明して、勝田先生からcommentを受けたが、この所謂寿限有現象は、この程度の培養日数で起るのが一般的かどうか、mass
cultureで調べてみた(図を呈示)。図に累積増殖カーブを画いた。(これは、細胞数を正確に数えたのが培養3代目だったので始めの部分に多少の修正を加えてある。)
丁度10代目、培養40日頃より増殖が落ち、15代目位で細胞増殖が止り、培養が続かなかったことを示している。
(3)MCAの感受性についてAHH活性を調べれば良いので、今迄度々報告したC14-benzo(a)pyreneを水溶性代謝産物に代謝する酵素を、凍結細胞を別に融解して調べてみた。すなわち、図にこの結果を同時に記入することは正式には妥当でないが、比較の意味で、記入してみると、培養20日迄の培養細胞ではC14-benzo(a)pyrene代謝活性は落ちていないことがわかる。現在この実験は進行中である。
(4)上の2つの実験からmass cultureの場合、少なくとも培養20日迄は、C14-benzo(a)pyrene代謝活性を持った元気に増殖する細胞が得られていることが結論される。
クローニングしたことにより20〜25日で増殖能も、MCA感受性も落ちて了う現象は、何かクローニングに伴う現象か、われわれのテクニックの問題か、今後の検討課題として残った。
《乾報告》
先月の月報で、妊娠ハムスターに亜硝酸ナトリウム(NaNO2)を投与した母体より得た胎児細胞において著明なMorphological
transformationがえられた事を報告しました。現在これらTransformed
Colonyのいくつかをcloningし、移植の為培養をつづけております。今月はtransformationに関連した現象として、同胎児細胞の染色体異常、micronucleusの出現の結果を報告致します(表を呈示)。
以上の如く、妊娠ハムスターにNaNO2を単独投与では、著明なTransformationが観察されるにもかかわらず、有意差のある染色体異常は出現しません。
次に昨年Schmidが提唱した、動物体内で、癌化性物質と関連がきわめて深いと云われているMicronucleus
Testを行なった結果が表2です(表を呈示)。
表の如く、NaNO2単独投与で、micronucleusを持つ細胞が著明に増加し、NaNO2
500mg/kg投与では、DMN 200mg/kg投与の場合と同様なInductionがあります。
Micronucleus自体の成因が現在論議されておりますが、染色体観察より、標本作製、観察共に容易ですので、今後少し、細胞癌化又は癌原性物質とMicronucleusの関連も見ていくつもりです。
《山田報告》
前号まで報告して来た成績は、培養細胞の培養条件におけるその増殖と表面荷電との関係についてですが、そのなかで培養細胞の植込み直後に一過性に荷電密度が高まり、ConAに対する反応が変化する成績がありました。その原因の一部は細胞の分離による表面の損傷が刺激になっているのではないかと推定されました。
そこで、この現象を解析する意味で、植込みの際に細胞間を分離する必要のない浮遊培養細胞株(AH-7974)について、植込み後の細胞電気泳動度、ConAに対する反応性、増殖率を経時的に検索してみました。(Tapping
Culture法)
(図を呈示)図に示すごとく植込み直後の1日、2日目には全く電気泳動度のピークがなく、増殖率は著しく速く、5日目に急激に泳動度が減少しました。そしてConA
1/ml 37℃30分処理により植込み後1〜8日間は常にその電気泳動度は増加しました。このConAに対する反応性は、これまでの培養ラット肝由来細胞ではみられない所見で、むしろin
vivoのAH-7974に類似の所見です。