【勝田班月報・7708】
《勝田報告》
 §ラッテ肝細胞のジエチルニトロソアミン(DEN)による培養内悪性化の実験−復元成績
 RLC-23(対照群)、RLC-23・DEN50(培養第2代にDENを50μg/ml、1週間連続投与した群)、RLC-23・DEN100(培養第2代にDENを100μg/ml、1週間投与した群)について、動物への復元実験をおこなった。
 接種動物は、同系ラッテ(JAR-2)、接種部位は皮下、接種細胞数は1,000万個〜4000万個cells/rat。
 対照群は腫瘤を作らなかったが、処理群は2群とも腫瘤を形成した。DEN50処理群は1ケ月半で親指大の腫瘤を作ったがDEN100処理群の腫瘤は4ケ月の観察でも急激な増大はなく、小豆大にしかならなかった。しかしその組織像は悪性像であった(写真を呈示)。

《難波報告》
 47:チャイニーズハムスター(CH)の肝臓より培養株化した上皮細胞と繊維芽細胞
 従来、ラット、マウスの肝臓由来の上皮性細胞の培養株については多くの報告がある。そして、それらの培養株のあるものについては、1)アルブミン産生、2) Tyrosine Amino-transferaseや、Ornithin transcarbamylaseなどの肝細胞に特異的な酵素の存在、3)培養内で癌化させて動物に移植し肝癌であることを確認する、などの諸点から肝実質細胞が培養されていることが証明されている。
 私共はCHの肝細胞の培養株化を目的として、1975-12-16より、培養を開始した。当初の私どもの研究の目的は、1)CHの肝細胞の培養の報告がまだない、そして、2)もし、培養化に成功すれば、CH由来の多くの株化細胞のクロモゾームは長期間の培養条件下でも、比較的安定で、near 2nに保たれる利点があるので、細胞遺伝学的仕事に役立つであろうと考えた。
培養の開始:生れる直前の2匹の♂胎児の肝を細切し、トリプシン処理で細胞を分散し、シャーレにまき込んだ。
 培地:1)MEM+10%FCS+10mM Hepes。
    2)MEM+10%FCS+10mM Hepes+4.2x10-6M Dexamathasone
 培養の経過と結果:培地1)を使用した場合には、Fibroblastsがovergrowthして、Epithe-lial cellsの増殖がみられなかったので、培養を中止した。培地2)ではFibroblastsnocellsheetの中にEpithelial cellsがColony状に点在し、徐々に増殖して来た。この上皮性の細胞の増殖はFibroblastのcell sheetの上、あるいはFibroblastswo押しのけてゆっくり増殖しているようにみえた。Epithelial cellsがシャーレ一杯に充分に増殖するまで、2/wの割合で培地の更新を行い、なるだけ上皮性の細胞を増した状態にしておき、トリプシンで細胞を剥がし、少数細胞をシャーレにまき、クローニングによって繊維芽細胞と、上皮性細胞とを分離した。培養の経過は図に示した(図を呈示)。
 現在、上皮性細胞、繊維芽細胞ともに、Agingを示すことなく活発な増殖を続けている。Plating Efficiencyは、Epithelial cellsで5〜10%、Fibroblastsで30〜50%である。
 Epithelial cell lineの確立のためには、クローニングは必須であるが、次の2点も重要と考えられる。1)Dexamethasone含有培地の使用。2)Epithelial cellsが充分Fibroblastsの上に一杯に増殖するまで継代を行わない。Epithelial cellsが充分増殖していない培養初期に継代を行えば、Fibroblastsがただちにovergrowして、Epthelial cellsが消失する。
 CH肝由来上皮性細胞と繊維芽細胞との応用:
 肝臓に由来した、上皮性細胞と繊維芽細胞とが種々の化学発癌剤に対して、1)感受性に相違があるか否か、2)Mutation rateに差があるか、どうかの2点を現在検討中である。
 1)HepatocarcinogenであるAflatoxinB1に対しての、感受性の検討(表を呈示)の結果は、AFB1の毒性に対して、上皮性の細胞は感受性が高く10-6乗Mで、急激に細胞が死亡していることが判る。
 2)Benzopyreneに対する両細胞系の感受性の比較(表を呈示)では、両細胞はBPに抵抗性で、感受性の差はない。

《高木報告》
 V79細胞に発癌剤(mutagen)を作用させる前後の条件につき検討すべくpilot experimentを行った。200cellsをplateに植込み、6時間後に4NQO 4x10-8乗〜1.6x10-7乗Mを2時間作用させて後、24時間arginin deprived medium(ADM)またはconditioned mediumでincubeteし、以後MEM(ADM+Arg)+10%FCSでincubateして7日目にcolony countを行った。
Scheduleは図の通りである(図を呈示)。Aは対照で終始MEM+10%FCSを用いたもの。
B、C、DはそれぞれX印の期間だけADM+10%FCSを用いたもの。
E、Fは△印の期間conditioned mediumを用いたものである。この場合には、24時間後に培地をMEM+10%FCSで交換し、B、C、D、の場合には24時間後に100倍濃度のArginine液を滴下した。conditioned mediumはV79がconfluentになった直後に培地を交換し(MEM+10%FCS)、24時間incubateした後、これを集めてmillipore filterで濾過したものである。
図の如き結果であった(図を呈示)。(A)の対照に比し、4NQOに関しては細胞植込み直後からADMをもちいた場合(D)は、Survivalがむしろ減少し、植込み後4NQOを作用させるまではMEMを用いた方が増加の傾向がみられた。またconditioned mediumを4NQO作用時、および作用直後より用いた場合はさらに増加のの傾向がみられた。
この(B)、(E)、(F)などの条件につき、さらに4NQOの作用時にHanks液を用いて細胞のDNA合成の状態をH3-TdRを用いて検討している。
ヒト胎児細胞にEMSを作用させる実験も6ケ月を経て依然培養をつづけている。

《乾報告》
 先月の班会議で亜硝酸(NaNO2)とモルホリン(Mo)を妊娠ハムスターに同時投与し、胎児細胞に8AG耐性突然変異、形態転換が出現することを報告しました。又投与動物の胃内には、ニトロソモルホリン(N・Mo)の生成がみとめられました。
 今回は、NaNO2、Mo各一回500mg/kg投与動物の胎児細胞の変異がN・Mo何mg/kgに相当するかをしっらべるため、動物にN・Moを投与し、Morphological transformation、8AG mutationをみたので報告します。
Morphological transformationの出現結果を表1に示しました(表1、2を呈示)。NaNO2、Mo同時投与による胎児細胞のtransforming rateはN・Mo 200mg/kg投与と略々同じであることがわかりました。表2で明らかな様に8AG mutationの出現率も又、200mg/kg N・Mo投与の結果とよく一致します。
 前号No.7707で報告した様に、N・Moの胃内生成は、15.9mg/kg/30min.で、もし生成量が減ずることなく6時間形成が継続すると、全形成量は190.8mg/kgとなり、結果をよく説明出来ますが・・・。
現在Transformed coloniesをcloningして復元移植を試みております。

《梅田報告》
 金属化合物について検索しているが、今回は発癌性金属化合物の突然変異誘起実験の結果を報告する。
 (1)突然変異誘起実験の系として、今迄報告してきたFM3A細胞が各種金属化合物と2日間の接触により、8-azaguanine耐性を獲得する突然変異をみる方法によった。現在迄に調べた金属化合物は、Cr化合物としてK2Cr2O7、CrO3、K2CrO4、Cr(SO4)3、Mn化合物としてMnCl2、KMnO4、その他の化合物としてNiCl2、CdCl2、さらに発癌性のはっきりしないHgCl2の9種類である。
 (2)得られたMutation frequencyから実験群とcontrol群の比をとり、(表を呈示)表にその全実験結果をまとめて示した。各化合物について2回から4回実験を行っているが、ほぞ再現性のあるデータが得られている。すべて半対数稀釋の濃度を用いているが、各化合物で調べた以上の濃度では毒性が強く、突然変異率を観察出来なかった。
 表でみるように、明らかに突然変異性を示したものは、6価のCr化合物のK2Cr2O7とCrO3であり、他の化合物は全てはっきりとした突然変異性を示さなかった。すなわち、同じ6価のK2CrO4では毒性はあったが、突然変異性ははっきりせず、3価のCr2(SO4)3は、毒性は非常に弱く、しかも突然変異性も証明されなかった。発癌性の証明されているNiCl2、CdCl2でも本実験条件では突然変異性は証明されなかった。
 (3)今後の問題として次のように考えて実験計画を立てて居る。上の実験では数多くのサンプルを扱うことに主眼をおいているため、金属化合物は2日間の接触と定め、直ちに8AG耐性細胞検出のアッセイに入っている。投与した金属化合物のbiotransformtionとか、障害されたDNAの修復などを考えると、さらに接触時間と、8AG添加の時間即ち、wxpression timeの検索の必要性がある。

《榊原報告》
 §Studies in progress:培養ラット肝細胞による
 1.Collagen形成の事実から類推すると、ヒト癌組織に屡々みられる著明なfibrosisも単に正常間葉系細胞の癌細胞に対するreactionの結果と見做すべきか否かは疑問となる。特に、adenocarcinoma mucocellulare scirrhosumと呼ばれるtypeの癌では、癌細胞自身がcollagenを産生している“らしい"と主張する病理学者のgroupがある。この問題は、非常に魅力的なテーマであって、現在次の様な実験を計画し、既に着手進行中であるが、未だ結果を報告する段階に至ってはいないことをお断りしなければならない。;ヒトcollagenの可溶性分劃を免疫原として家兎を免疫し、種特異的な抗コラーゲン抗体を作製する。培養人癌細胞をATS処置したhamster頬袋に移植してtumorを作らせ、凍結切片を作り、切片上で抗ヒトコラーゲン家兎抗体と反応させる。次いで同一切片上で抗家兎IgG・山羊蛍光抗体を反応させて、蛍光色素の局在を観察する。更に別の切片では、抗家兎IgG・山羊peroxidase標識抗体を二次抗体として反応させ電子顕微鏡下に特異的シマ目模様に一致してperoxidaseの沈着が認められれば決定的証拠となる筈である。問題は、collagenのantigenicityが弱い為に十分な力価を有する抗体が得られるかどうかである。免疫に要する期間も2〜3ケ月と長く、目下boosterを繰り返している。
 2.免疫と発癌の間には密接な関係があるように想像されているが、積極的証拠は意外に少ない。ATSでT-cellをsuppressしたgroupと無処置groupの間に於る発癌過程の差をACIラットを用いて検べている。発癌剤としては、MAM acetateをi.p.投与している。癌化に至るlatent periodの短縮のみられることが望ましいが、今は虚心坦懐に経過を観察するのみである。 

編集後記


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