【勝田班月報・7709】
《勝田報告》
Tapping cultureによる長期浮游培養(月報7705のつづき)
1)吉田肉腫はあまり増殖が速すぎて、手がかかるので、培養を中止した。
2)3)AH-109A、AH-66は安定した増殖率を保って継代されている。
4)AH-130の浮游細胞は細胞密度がだんだん高くなって、安定した増殖率を保っている。
5)AH-7974も浮游細胞の細胞密度が高まってきた。現在も、腹水の塗抹でみられるようなAH-7974特有の肝癌島を形成している。
JTC-16がTapping cultureで浮游状に増殖している時の形態と、AH-7974のTapping
cultureによる培養9ケ月の形態を示した(写真を呈示)。何れも浮游液を遠沈、塗抹し、ギムザ染色したものである。
《高木報告》
1)Mutagen(Carcinogen)で細胞を処理した後の、incubationの条件を変えることによってDNA修復の差をつくり、これとMutation(Carcinogenesis)の頻度との関係を研究することを目的として、主としてV79細胞を用いて実験をしているが、種々検討の結果、処理条件を図の様に決定した(図を呈示)。
1)Preincubationは播いた細胞がPetri dishに定着し、操作できる最短時間として6時間をとった。
2)ここに用いるMutagen(Carcinogen)はchemicalであるので、処理終了まではcontrolの細胞の条件と差がつかず、一定の等しいdamageを与えるように全てMEM+10%FCSを用いた。
3)ADMを用いる意味は、細胞のDNA合成を止めることにあるので、dialyzed
FCSの濃度も5%とした。
4)conditioned mediumはこの種の実験でsurvivorを上昇させることが知られているので、これも用いてみた。conditioned
mediumはV79を播き込み、2〜3日後full sheetになってから培地を交換し(MEM+10%FCS)、24時間incubation後これを集めて、membrane
filterで濾過し、凍結保存したものである。
この条件の下にsurvivorについての実験結果は次図の如くであった(図を呈示)。播き込む細胞数は150〜200/plateで6cmのFalconのPetri
dishを使用した。
4NQOについては上記の3条件、UV、MNNG、MESについてはADM+5%dialyzed
FCSで、conditionedmediumについては目下検討中である。
図1.4NQO:各濃度30分の処理。処理後ADM培地でincubateした方が、MEMよりsurvivorが多く、conditioned
mediumではさらに多かった。
図2.UV:15W slit 2cm 距離25cm 0〜100secの照射条件。処理後、ADM培地でincubateした方がMEMよりsurvivorが多かった。patternは再現性をもって4NQOとよく似ている。
図3.MES:各濃度120分の処理。ADMでincubateしたものと、MEMでincubateしたものとの間に有意なsurvivorの差は認められない。
図4.MNNG:各濃度120分処理。4NQOおよびUVとは異なり、ADMでincubateした方がMEMでincubateしたよりsurvivorが低下した。この点さらに検討の予定である。
2)本年2月に開始したヒト胎児細胞の培養は6ケ月を経た現在殆ど死滅し、EMS処理細胞だけは生残っている。しかし形態的には特に変化はなく、近日中ATS処理ハムスターに移植を予定している。新しい培養でさらに追試の予定である。
《難波報告》
48:チャイニーズハムスターの肝臓より培養化された上皮細胞と繊維芽細胞とに対するDexamethasonの効果
肝細胞の培養に際して、ステロイドホルモンが有効との報告がかなりある。それらの報告は2つに分けられるようである。すなわち、
1)ステロイドホルモンが肝細胞の増殖を促進する、あるいは培養内での肝細胞の分化機能の発現に役立つ。
2)培養内に共存する上皮性細胞と繊維芽細胞とを選別するために、上皮性細胞の増殖を促進させ、繊維芽細胞の増殖を抑える。
我々は、チャイニーズハムスター肝より得た上皮細胞と繊維芽細胞とのplating
effic-iencyに対するDexamethasonの効果を検討した結果、表のごとくなった(表1、2を呈示)。その結果を列記すれば、
1)4.2x10-7乗〜4.2x10-6乗M濃度のDex.は両細胞のPEを有意に上昇させた。
2)4.2x10-5乗Mの高濃度のDex.はあまり効果がない。
3)Dex.は検討した範囲内の濃度ではFibroblastsの増殖を抑制しない。
49:Chinese Hamsterの肝より得た、上皮性細胞と繊維芽細胞とのアルギニン不含培地中での増殖能の検討
Arg(-)のMEM+10%dialyzedFCSで両細胞を培養し、7日間の増殖を次図に示す(図を呈示)。7日間では両細胞とも増殖したが、しかしFibroblastsの方は4〜7日間で増殖の低下傾向がみられるのに対して、Epithelial
cellsの方は、同時期に増殖の立ち上がりがみられる。Arg(-)培地の両細胞に対する効果は、もう少し長くArg(-)の培地で細胞を培養してみる必要がありそうなので、目下その実験を進めている。
50:Chinese Hamster liversより培養化された、Epithelial
cellsとFibroblastsに対する種々のChemical
Carcinogensの影響
前月報(7708)にEpithelial cellsのPlating efficiencyは5〜10%、FibroblastsのPEは30〜50%と報告した。したがって、今回の実験では、Epithelial
cellsは3,000〜5,000コ/60mm dish、Fibroblastsハ300〜600コ/60mm
dishをまき込んだ。24時間後、種々の化学発癌剤を添加し、そのまま4日間培養を続け、その後、発癌剤を含まぬ対照培地(MEM+10%FCS+4.2x10-6乗M
Dex.)にして、7〜10日間培養後、そのPEを求めた。表3にその実験結果を示した(表を呈示)。それぞれの薬剤で、種々の濃度を用いて、Toxicityを検討したが、表にはEpithelial
cellsとFibroblastsとに対する、Toxicityのはっきり出た薬剤の濃度のみ記した。+は、それぞれの薬剤のToxicityに対して感受性の高い方の細胞に記した。また,Ser-vival%は、薬剤非処理の対照群のPEで、薬剤処理群のPEを割ったものである。
結果はDimethylnitrosoamine(DMN)、AFB1などのHepatocarcinogensのToxicityに対して、Epithelial
cellsの方がFibroblastsよりsensitiveであることを示している。
《山田報告》
ラット培養肝細胞のConAの反応性と細胞密度との関係を引続いてしらべて居ます。
今回は従来Tumorigenicityの証明されていないRLC-20について検討しました。方法は従来通りです。
最近RLC-20は長期培養中に一見悪性化を思わせる様なコロニーを形成したので、これを分離して別に培養系としRLC-20Bと名付け、残った細胞をRLC-20Aとして継代して居ます。
RLC-20Aは増殖速度も遅く、細胞を採取するのに容易でないので、増殖率の高いRLC-20Bについてまず検討してみました。
RLC-20Bでは図に示すごとく、full sheet後、荷電密度は著しく低下し、非悪性の型を示しましたが、ほんの少しばかりConAに対する反応性が残り、悪性型と云うより、良性型の変化を示しました。次はRLC-20Aを検討の予定です(夫々図を呈示)。
RLC-20B細胞株と同じ系の細胞で発育の著しく遅いRLC-20Aについて経時的にその変化をしらべました。この株は最も正常に近い状態を保っていると考えられる株ですが、予想通りの結果となりました。
すなわち植え込み直後の1〜3日目に反応性に一時期その表面荷電が増加し、その時期に1μg/mlのConAに反応して荷電の上昇がみられ、その後full
sheet(この場合は増殖性が遅いので16日目以後)になった時期では完全にConAに対する反応性がなくなり、むしろConAにより荷電密度が低下する様になりました。これで一応この実験を終了しましたので、全体の知見をまとめて次回に考察したいと思っています。
なほSuspension cultureで増殖する肝細胞株について追加実験をしようとおもい、現在準備中です。
《梅田報告》
先月の月報で発癌性金属化合物の突然変異性について報告したが、今回は染色体異常誘起性について調べた結果を報告する。
(1)細胞は突然変異性を調べたと同じFM3A細胞を用いた。金属化合物を加えた培地で培養後24時間目、48時間目に染色体標本を作製した。染色体標本作製前2時間に、Colcemidを加え分裂像を蓄積させた。現在迄に調べた金属化合物は、突然変異実験で調べたと同じK2Cr2O7、CrO3、K2CrO4、Cr(SO4)3、KMnO4、MnCl2、NiCl2、CdCl2、HgCl2である。
(2)結果を表に示す(表を呈示する)。K2Cr2O7については3回、CrO3、K2CrO4、KMnO4については2回の実験を行った。その他については、1回の実験しか行っていない。それぞれの化合物について、これ以上の濃度を用いると細胞は変性壊死する、ぎりぎりの所迄調べてある。
(3)Cr化合物についてはK2CrO7とCrO3で強い、K2CrO4で軽い染色体異常惹起が認められた。異常の内容はgap、break、exchengeであった。48時間処理で24時間処理より異常が増加していた。48時間処理のこれら3化合物の異常の%を両logのグラフに画くと図のようになる(といってもK2CrO4では一点しかないが。図を呈示)。この図からK2Gr2O7はCrO3の約2倍の強い染色体異常惹起能のあることがうかがえる。すなわち、Crあたりで考えると、両者は殆同じ毒性を現していることがわかる。これに対しK2CrO4の異常惹起能は、K2Cr2O7と較べると約10倍の差のあることがわかる。
Cr化合物でもCr2(SO4)3では異常惹起作用が殆んど認められず、10-3乗M処理でもcontrolと同じ異常のレベルであった。
(4)その他の化合物の中では、KMnO4処理で多少異常が増加しているが、その他の化合物では異常の増加は認められなかった。
(5)前回の突然変異の結果と比較すると、突然変異を起しているものは染色体異常も惹起していることがわかる。そして染色体異常の頻度は、両logのグラフ上にプロットすると直線にのるらしいこと、直線にのるとするといろいろの比較、spontaneous
aberration rteとの関係などの解析がた易くなることがわかる。
(6)なお、動物実験では発癌性の証明されているNi化合物で培養細胞での実験で、突然変異性、染色体異常共に認められなかったことは重要である。何らかの理由によると思われるし、その理由解明の研究がなされるべきと考えている。
《乾報告》
亜硝酸ナトリウムの経胎盤効果
先に我々は亜硝酸ナトリウム(NaNO2)を培養ハムスター細胞に投与し、細胞のMalignant
Transfomation、染色体切断を観察した。今回は、同物質の経胎盤効果をみる目的で従来の方法で、妊娠ハムスターにNaNO2を、125、250、500mg/kg投与して、胎児細胞を培養、細胞のTransformationを観察した。
実験方法は、過去数回にわたって報告して来たので省略するに、結果を表に示した(表を呈示)。表で明らかな如く、NaNO2
500mg/kg投与では著明なTransformation Rateの上昇がみられた。
《榊原報告》
蛍光抗体法によるコラーゲン同定:ラットのコラーゲンに対する種特異的抗体を作成した。Wister系雄性ラットにペニシラミンを4週間経口投与してコラーゲンのcross-linkageを阻害しておいてから、皮膚を剥いでhomogenizeし、型の如く0.4N酢酸を用いてコラーゲンの酸可溶性分劃を単離した。得られたsompleの純度は、アミノ酸分析により、ほぼ100%pureだという(都老研生化・益田博士による)。これを、0.05%酢酸に10mg/mlの割合で溶解し、等容ののFreund
complete adjuvantを加えて乳化させ、家兎のfoot-padに5mg/animalの割合で免疫した。2週間後及び更に2週間後と2回にわたり、追加免疫をadjuvantぬきで腹腔内に行い、最終投与後27日目に試験採血した。培養ラット肝細胞株RLN36をconfluentのまま3週間培養、PBSで3回洗ったのち、ドライヤーで乾燥させ、未固定のまま抗血清をかけて37℃、1時間incubateした。PBSで5分間づつ3回振盪しつつ洗い、再び乾燥させてから、Hyland製抗兎IgG、FITC標識山羊7Sγ-globulin分劃をPBSで20倍に稀釋してcell
layerにかけ、再び1時間37℃でincubateしたのちPBSで3回洗い、無蛍光グリセリンで封入して蛍光顕微鏡下に観察した。鍍銀繊維の細い網目の上に、強い特異光が認められた。細胞核はことごとく黒く抜けていたが、胞体には淡い蛍光が、又一部の細胞の細胞膜上に繊状に特異蛍光が認められた。各種対照試験の結果、及び実験結果の写真は班会議で発表するが、有効な力値を有する種特異的な抗コラーゲン抗体が得られたことは間違いなさそうである。又今回の結果は、鍍銀繊維がコラーゲンであることを明らかに示している。ヒトコラーゲンに対する抗体も得られて居り、特異性のcheckを行なう予定でいる。
[勝田班月報のワープロ化:1998-11-26〜2001-5-2]